データが示す危機 2070年、日本のスポーツを誰が担うのか…
総人口は、2020年の1億2615万人から、2040年には1億1284万人、そして2070年には8700万人へと、50年間で約3915万人、率にして31%もの減少が見込まれている 。これは、社会のあらゆる分野に甚大な影響を与える数字だが、スポーツ界にとって特に深刻なのは、その歪な年齢構成だ。
将来の競技人口を直接左右する「19歳以下」の層は、2020年の2074万人(総人口の16%)から、2040年には1547万人(同14%)、そして2070年にはわずか1099万人(同13%)にまで落ち込むと予測されている 。50年間で約975万人、実に47%もの減少である 。これは、全国の学校の運動部や地域のスポーツクラブで汗を流す子どもたちの姿が、今よりも半分近くになってしまう可能性を示唆している。この事実は、特定の競技におけるタレントの発掘・育成システムを根底から揺るがし、国際競争力の維持はもちろんのこと、国内リーグや大会のレベル維持さえも困難となる可能性を孕んでいる。
さらに、スポーツを支える「20~64歳」の生産年齢人口もまた、2020年の6938万人(総人口の55%)から、2070年には4234万人(同49%)へと、約2700万人(約39%)減少する 。この層は、アマチュアスポーツの競技者としてだけでなく、指導者、審判員、ボランティア、そしてプロスポーツの観客やスポンサー企業の働き手として、スポーツ界を多方面から支える存在だ。彼らの減少は、スポーツイベントの運営体制の弱体化、スポーツ関連消費の低迷、そして企業スポーツの縮小など、複合的な問題を引き起こす。
一方で、「75歳以上」の人口は、2020年の1860万人(総人口の15%)から2070年には2180万人(同25%)へと増加し、総人口の4人に1人が75歳以上という超高齢化社会が到来する 。これは、医療・介護費の増大という社会保障制度への負荷だけでなく、スポーツのあり方そのものにも変革を迫る。健康寿命の延伸や介護予防のためのスポーツの役割は増大するが、その受け皿となるプログラムや指導者を誰が提供し、運営していくのかという新たな課題も生じる。スポーツ界は、この「静かなる危機」の進行を直視し、従来の延長線上ではない、抜本的な対策を講じる必要に迫られている。
つまり大規模国際大会での活躍により「サッカーの競技人口」「ラグビーの」「野球の」と手前味噌な施作に注力しているような余裕は、今の日本にはない。


