実際に喜ばれる福利厚生とは
すべての福利厚生が活用されるわけではない。福利厚生の中には、我が社は進歩的で従業員に優しい会社だ、とアピールするためだとしか思えないものもある。
筆者自身、オンボーディング(新人研修)の説明では素晴らしいと思えたけれど、利用しようと思ったことが一度もない福利厚生があった。何よりも不満だったことのひとつは、福利厚生と称したディナーが催され、出席を強制されたことだ。プライベートの時間を大切にする人間としては、それが福利厚生だとはまったく思えなかった。
従業員は、自分の時間をよりコントロールできるような福利厚生を評価する傾向がある。ペット休暇であれ、家事サービスであれ、個人的な夢をかなえるための資金であれ、最も効果的なのは、ストレスが実際に軽減される福利厚生だ。
これは、全員が同じ福利厚生サービスを利用するわけではないことを意味する。オフィス内にボルダリング用のウォールが設置されれば、面白そうだと喜ぶ人もなかにはいるだろう。一方で、ボルダリング後に乱れたヘアやメイクをどうしていいのかと考える人もいる。大事なのは選択肢があることだ。
福利厚生が企業側にもたらす金銭的メリット
福利厚生サービスは余計な出費に思えるかもしれないが、従業員の定着率や士気、さらには生産性の向上に直結する可能性がある。MetLife(メットライフ生命)が2023年に発表したリポート「従業員向け福利厚生トレンド(Employee Benefit Trends)」では、福利厚生に満足している従業員の61%が、勤務先にそのまま残る可能性が高いことが明らかになっている。
従業員の実際の希望に見合った福利厚生サービスを提供している企業の方が、現在の市場で繰り広げられる人材競争で優位に立てるわけだ。
従業員が本当に望んでいるものは?
奇抜な福利厚生サービスが話題になることがある。とはいえ、必ずしもそれが効果的とは限らない。福利厚生サービスを新たに導入する際にはまず、次のように問いかけるべきだ。
新しく導入する福利厚生サービスは、従業員が本当に望んでいるものか、それとも、「従業員が喜ぶだろう」とリーダーが思いこんでいるものなのか──従業員のやる気を引き出すためにも、リーダーはこの問いを真剣に検討すべきだ。


