就業時間中にガーデニングや養蜂に挑戦できる福利厚生
エナジーバーのブランドClif Bar(クリフバー)や、天然由来のリップクリームやハンドクリームを製造するBurt's Bees(バーツ・ビーズ)などの企業では、会社の敷地内に畑や養蜂場があり、従業員が自発的に作業に従事できる。
従業員が就業時間中に野菜を育てたり蜂の世話をできる、システム的に整った取り組みだ。素晴らしいアイデアだと思う人もいるだろうが、誰もが土いじりや蜂の世話がしたいというわけではないし、筆者はおそらくどちらも遠慮したい。職場で畑仕事をした直後にZoomの通話に出るなんて、ちょっと考えられない。
社内にジムがあるなど、身体を動かせる福利厚生サービスもそうなのだが、ひと汗かいたあとに、髪やメイクを直して見た目を整えなくてはならないということを意味するなら、女性にはいまひとつ魅力に欠けるサービスといえるだろう。
従業員個人の夢をサポートする福利厚生
以前働いていたいくつかの会社では、営業成績が優秀だったため、ハワイやセント・トーマス島への旅行をプレゼントされたことが複数回ある。旅行代がタダだったので、大いに楽しんだ。とはいえ、当時は営業担当者だけが対象だった。
現在では、従来型のボーナスに代わって、従業員個人のゴールを応援する福利厚生を実験的に取り入れている企業がある。英ブライトンにあるデジタルマーケティング代理店Propellernet(プロペラネット)は、従業員の夢を支援するプログラムを導入している。
従業員は、「本を書きたい」とか「イタリアで料理を習いたい」などの個人的な夢を会社に申請しておく。そして、会社が何らかの節目を迎えるたびに、会社はひとりの従業員に、夢をかなえるための資金を提供する。最近のケースでは、「ノルウェーで犬ぞりに乗りたい」「スタント俳優になりたい」という従業員のために資金を出したという。
こうしたクリエイティブな福利厚生は、企業が、従業員の仕事以外の側面にも関心を示し、職務の裏側にいる人間を大切にしている証拠といえるだろう。
ライフスタイル応援手当
筆者が何よりも関心をそそられたのがこの福利厚生だ。近ごろは、万人向けの福利厚生サービスの提供をやめ、「暮らしをラクにするためなら何にでも使っていい手当」を毎月支給する企業が増えている。
グーグルは何年も前から、こうしたライフスタイル応援手当を試験的に実施している。また、Evernote(エバーノート)、Airbnb(エアービーアンドビー)、Expensify(エクスペンシファイ)といった企業もライフスタイル支援手当を支給しており、パーソナルウェルネスから生涯学習まで、さまざまなことに柔軟に使うことが可能だ。
ハウスクリーニングやフィットネス、学習、さらには個人的な趣味に充ててもいい。自由に使えるし、時流にも合っている。各社は今、従業員が望んでいることを勝手に推測するのではなく、従業員に選択肢を与えている。
全従業員の好みを推測しようとしないこうした福利厚生サービスは、個人を尊重する、より賢いサービスといえるだろう。


