ハヤブサ目の鳥たちは、人を魅了してやまない。(狭義の)ハヤブサ(Falco peregrinus)は「世界最速の鳥」の称号を手にしており、獲物に向かって急降下する際には最高時速380kmに達する。
シロハヤブサも、この仲間を代表する種の一つだ。ハヤブサ目の最大種であり、時には神々しい純白の個体が目撃されることもある。エレオノラハヤブサ、モーリシャスチョウゲンボウ、チゴハヤブサなど、ハヤブサ目にはほかにも魅力的な種がたくさんいる。
だが、3種のハヤブサについては、もはや世界のどこでも姿を見ることができない。彼らの名は、キューバチョウゲンボウ、レユニオンチョウゲンボウ、グアダルーペカラカラだ。発見から絶滅までの、彼らの物語を紹介しよう。
キューバチョウゲンボウ
キューバチョウゲンボウ(Falco kurochkini)は、絶滅したハヤブサの仲間のなかではもっとも最近になって記録された種で、キューバ西部で発見された化石だけが知られている。この種は、1500年代にヨーロッパ人の入植が始まってまもなく姿を消したようだ。
チョウゲンボウ類はホバリングを駆使した狩りで知られるが、キューバチョウゲンボウは、この仲間としては異例の短い翼と長い脚をもっていた。こうした特徴は、キューバチョウゲンボウが空中よりも地上での生活に適応していたことを示唆している。おそらくは林床で狩りをし、昆虫や小型爬虫類を捕食していたのだろう。両生類も狙ったかもしれない。
キューバチョウゲンボウが暮らした生態系は、すでに絶滅したフクロウやさまざまな種の森林性鳥類で構成されていた。ヨーロッパ人の到達とともに、島には大型のネズミやネコ、マングースなどの外来捕食動物が持ち込まれ、これらが地上性のキューバチョウゲンボウに大打撃を与えたと考えられる。農業や林業のための生息地破壊も、個体数減少を助長しただろう。
キューバチョウゲンボウには飛翔能力があったが、長時間の飛行よりも瞬間的な急加速を得意としていたと研究者たちは考えている。ハヤブサ目では珍しい、地上性の生活様式へと進化しつつある種だったのかもしれない。
レユニオンチョウゲンボウ
レユニオンチョウゲンボウ(Falco duboisi)は、かつてレユニオン島に生息していた──インド洋のマスカリン諸島を構成する島の一つだ。
残存する歴史記録は一つだけで、1670年代の文献に、「家禽や猟鳥に対する脅威である」と記されている。それからまもなく、レユニオンチョウゲンボウは駆除の対象となり、以降の観察記録は一つも残されていない。
正確な絶滅時期は不明のままだ。1974年に半化石化した死体が発見され、のちの研究で、マスカリン諸島の他種とは異なるチョウゲンボウ類の独立種であったことが裏づけられた。
森林性のモーリシャスチョウゲンボウ(レユニオン島に近い、同じマスカリン諸島のモーリシャス島に生息する固有の近縁種)が、短く丸みを帯びた翼をもち、密な植生のなかを機敏に飛び回ることを得意としたのに対し、レユニオンチョウゲンボウは、形態も行動もユーラシアのチョウゲンボウ(Falco tinnunculus)に似て、開けた環境での生活に適応していたようだ。
レユニオンチョウゲンボウは、昆虫や小型脊椎動物を獲物にしたと考えられている。キューバチョウゲンボウや、その他の多くの島嶼性(とうしょせい:島々やそこに生物を特徴づける性質)の鳥たちと同じように、レユニオンチョウゲンボウの絶滅も、狩猟、生息地の喪失、大型のネズミやネコなどの外来捕食動物の移入といった、複合的要因の結果だった可能性が高い。
レユニオンチョウゲンボウの絶滅年代は、17世紀末から18世紀初頭とされている。



