天然のシラスウナギに頼らず養殖ウナギの卵からウナギを育てる完全養殖は、ようやく技術的に可能となったものの実用化されていない。完全養殖の最難関とも言える、生まれてからシラスウナギにまで育てる工程でコストがかかりすぎるためだ。だが、そこに大きな希望が見えてきた。従来の20分の1のコストでシラスウナギを大量に生産できる技術が開発されたのだ。
これまで水産庁委託プロジェクト「ウナギ種苗の商業化に向けた大量生産システムの実証事業」でウナギの仔魚の飼育方法を研究してきた水産研究・教育機構、ヤンマーホールディングス、マリノフォーラム21は、このほど、一度に大量のシラスウナギを低コストで生産できるコンパクトな水槽の開発に成功した。

ウナギは、卵から孵ったばかりのものを仔魚、そこから5〜6センチメートルほどに育ったものをシラスウナギと呼び、養鰻業者はこのシラスウナギを購入して育てている。だがご承知のとおりニホンウナギは絶滅危惧種であり、そのシラスウナギは国際的に高値で売買されている。資源保護のための業者間の協定はあるものの、闇取引によるシラスウナギの割合も高い。
そこで日本政府はウナギの完全養殖の研究を推奨してきた。その要となるのが仔魚からシラスウナギへ育てるまでの技術だ。水産研究・教育機構は研究の結果、水槽は円筒を半分に割った形状が適していること、そして半円筒の直径が50センチメートル以下だと成長速度と生存率がもっとも高いことを突き止めた。長さは影響しない。また、水槽の材質も従来のものから安価なFRPに変更し、最終的に直径40センチメートル、長さ150センチメートルの新型水槽を完成させた。短期試験では、1つの水槽で1000尾の仔魚を安定して飼育できることがわかった。以前は1つの水槽で20〜80尾がせいぜいだったので飛躍的な進歩だ。

また従来方式では、シラスウナギ1尾あたりの生産コストは4万円近かったものが、この新型水槽なら約20分の1の1800円程度にまで下げることが可能となった。水槽の水流などを含めた具体的な設計や製造はヤンマーホールディングスが行う。計画全体および水槽の量産など事業面での管理は、水産庁委託事業の代表機関であるマリノフォーラム21が担当する。

今後は、自動給餌を導入するなどして省人化、省エネルギー化を進めることで、さらなるコスト削減を目指す。研究グループは、「人工ウナギ種苗を安価に大量生産することが可能になると期待されます」と話している。



