市場は、FOMC(連邦公開市場委員会)が米国時間7月30日の次回会合で金利を据え置くと予想している。これは、雇用市場が堅調に推移しており、過去1年間、失業率が4.0〜4.2%の範囲内に収まっていること、そしてインフレ率も目標をやや上回る水準にとどまっていることが背景にある。ドナルド・トランプ米大統領は、政府の利払い負担を軽減する一環として、金利引き下げを望む意向を表明している。しかし現時点では、FOMCは経済状況の分析に基づいて金利を決定している。
市場の予測
米シカゴ・マーカンタイル取引所が提供している、FOMC政策金利に関する将来予測を可視化するFedWatchツールによると、債券市場では7月会合での利下げの可能性はわずか5%と見込まれており、利下げの実施はほぼないと予想されている。ただし、その後の9月会合では利下げの可能性が高く、10月もそれに続く可能性がある。つまり、2025年内に利下げは行われる見込みではあるが、そのタイミングは年後半だと見られている。もしその予想通りであれば、FOMCは7月の声明において、今後の利下げの可能性を示唆する文言を盛り込む可能性がある。
トランプ大統領の影響
トランプ大統領は一貫して金利の引き下げを求めており、米国時間7月2日にはジェローム・パウエルFRB議長の辞任を求める発言まで行った。ただし、大統領にはFRB議長を解任する権限はなく、2024年4月にパウエル解任の可能性に言及した際には、それによって株式市場のボラティリティが高まったという声もある。
もっとも、パウエル議長の任期は2026年5月までとなっている。来年のFRB議長任命に向けて、他の候補者たちがトランプ大統領の支持を得ようとするなかで、金利引き下げを求める姿勢が政策当局者の間で表面化する可能性もある。
とはいえ、パウエル議長とトランプ大統領の主張には違いがある。トランプ大統領は政府債務における利払いコスト削減を主な目的として金利引き下げを訴えているのに対し、FOMCの使命は「物価の安定」と「雇用の最大化」にある。そのため、FOMCが実際に利下げに踏み切るのは、インフレが明確に落ち着いているか、もしくは雇用市場が弱含む兆しが見られた場合に限られるだろう。政府による利払いの軽減は、FOMCの使命ではない。
さらに、FRBが直接制御できるのは短期金利に限られる。政府債務の利払いに大きく影響する長期金利は、より広範な市場要因によって決定されるのが実情である。



