最近の報道が正確だとすると、中国は中東・北アフリカという儲かる兵器市場、なかでも防空システム分野でロシアに大きな競争を仕掛け始めている。
ロンドンに拠点を置く中東専門メディア、ミドルイースト・アイ(MEE)は7日、アラブの国の当局者の話として、イランが6月のイスラエルとの十二日戦争以降に、中国製の地対空ミサイルシステムを受け取ったと報じた。受け取ったシステムの種類や数は不明だが、イラン側は代金を石油で支払っているという。
中国にはたとえば、ロシアのS-300地対空ミサイルシステムの自国版である紅旗-9(HQ-9)というシステムがあり、その射程延伸型として紅旗-9B(HQ-9B)もある。輸出版はそれぞれFD-2000、FD-2000Bと名づけられている。
とくにHQ-9B/FD-2000Bがイランに時宜にかなって引き渡されたのであれば、ロシアに強いメッセージが送られた格好になる。これまでイランが輸入した最も先進的な防空システムは、2016年に受領したロシア製S-300PMU-2だった。しかし、2024年の4月と10月に行われた2度のイスラエルによる攻撃で、イランの保有するS-300はすべてとまでは言わずとも大半が無力化された。しかもイスラエル側には損害が出なかった。そして6月の十二日間戦争で、残っていたS-300の構成要素もおそらくことごとく破壊された。イランはこれらのミサイル防衛システムにざっと10億ドル(現在の為替レートで約1460億円)を支払い、納入までに10年近く待たされていた。
イランはS-300の性能に失望しているだけでなく、ロシアに数年前に発注し、支払いも済ませたSu-35「フランカー」戦闘機がいまだに納入されないことにも苛立っているに違いない。こうした不満に加え、防空能力の再建が急務なことから、イランは中国製のJ-10C(殲-10C)「ビゴラス・ドラゴン(猛龍)」戦闘機の入手にも動く可能性がある。ニーズが切迫しているこの時期に、中国から地対空ミサイルが迅速に納入され、イランがそれに満足しているのであれば、その可能性は高くなる。



