アルジェリアという顕著な例外を除くと、ロシアの戦略防空システムであるS-300やS-400への関心は中東・北アフリカ地域全体ですでにピークを過ぎているのかもしれない。ロシアは名目上シリアに供与していたS-300を、バッシャール・アサド政権が2024年12月に崩壊する2年以上前に撤収させていた。イランのS-300は灰燼に帰し、MEEの報道が正しければ、追加のS-300や、より新しいS-400で代替されることもないだろう。もし中国側もHQ-9BやHQ-22といった防空システムの供与に前向きなのなら、その可能性はなおさら低くなる。
例外的で、また非常に大きな代償を伴うことにもなった動きとして、トルコによるS-400の取得がある。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコは2019年、ロシアから複数のS-400を受領したが、現在に至るまで実戦配備はしておらず、追加取得のオプションも行使していない。これらのS-400は倉庫に保管されたままであり、トルコは物議を醸したこの取得が原因で排除された米国のF-35統合打撃戦闘機(JSF)プログラムへの復帰を試みている。
ロシアはS-300やS-400を湾岸アラブ諸国に売り込んできたものの、1基も成約に至っていない。ただし、アラブ首長国連邦(UAE)や、もっと最近ではサウジアラビアもひっそりと、ロシア製パーンツィリ-S1中距離防空システムを取得している。これらの国々は、中国製の防空システムを選んでいるというわけでもない。サウジアラビアは7月2日、米国製のTHAAD(終末高高度防衛)ミサイルシステムを運用する初の中隊を発足させた。サウジアラビアとUAEは近年、韓国製のKM-SAM中距離地対空ミサイルシステムを発注しており、2018年にS-400の購入を検討していたイラクもこのシステムを選んでいる。
繰り返すと、ロシア製の高性能な防空システムを近年購入した中東諸国のうち、少なくとも2カ国が地対空ミサイル能力の調達先として中国を頼りにするようになっているもようだ。イランの場合、Su-35の納入遅れの件によって、この先、ロシアを供給国として信頼することは二度とないかもしれない。また、S-300の壊滅的な損失を経験したことで、ロシア製兵器の信頼性そのものに疑問を抱くようになっている可能性もある。もう一国のエジプトの場合は、米国の制裁を受けるリスクがあるため、やはりロシア製防空システムを選ばない可能性がある。
トルコによるS-400の取得は一度限りであり、トルコ側はいまではそれを内心後悔しているかもしれない。とはいえ、NATO加盟国トルコの場合、中国製の防空システムの購入を検討することにもなりそうにない。実のところトルコは2013年に、34億ドル(現在の為替レートで約5000億円)規模の共同生産契約の一環で中国にFD-2000を発注していたのだが、米国とNATOから圧力を受けてキャンセルに追い込まれている。
中東の兵器市場では現在、ロシアがいくつかの理由で失ってきている部分を埋めるかたちで、中国が急速に進出しつつあるように見える。ロシアが今後、失った部分を回復するのは不可能かもしれない。


