他方で、北朝鮮兵の配備には複雑な問題も伴っている。北朝鮮は、通常の歩兵より訓練の行き届いた特殊部隊を派遣したが、当初の展開では有能な指揮系統が欠如していた。同国の部隊には軍事クーデターを防ぐために複雑な指揮系統が敷かれており、これが障害となって効率的な意思決定が妨げられているのだ。また、言語の壁による問題もあった。ロシア語を話す北朝鮮人はほとんどおらず、朝鮮語を話すロシア人はさらに少ない。
ウクライナ侵攻への関与は1950年代初頭の朝鮮戦争以来、北朝鮮にとっては初となる大規模な武力紛争への参加であり、同国の兵士は近代的な戦争への適応に苦慮している。北朝鮮兵には戦闘経験が不足しているだけでなく、地勢に関する知識も欠けていた。同国の兵士は当初、ドローン(無人機)や砲撃の格好の標的となった。厳格な規律が敷かれているため、ドローンに容易に発見されやすい平原でも一斉に行動し、頭上でドローンの音を聞いても散らばって身を隠そうとはしなかったからだ。また夜になると裾の広がった上着を羽織るため、遠くからでも目立った。さらに、戦場で仲間の遺体を回収するために自らの命を危険にさらすのをいとわなかったことも、犠牲者の数を増やす要因となった。
北朝鮮は数カ月間で大きな損失を被り、派遣された兵士のほぼ3分の1に当たる約4000人の死傷者を出した。被害があまりにも大きかったため、北朝鮮軍は1月に前線からの撤退を余儀なくされた。
しかし、ロシア軍が北朝鮮兵を使い捨て要員のように扱ったにもかかわらず、金総書記を思いとどまらせることはできなかった。同総書記は3月、3000人の兵士を追加派遣することに同意したのだ。北朝鮮軍は最初の派遣以降、戦場経験を積み、近代的な電子戦の戦い方に関する理解を深めている。
同国は兵士だけでなく、兵器もロシアに提供している。約1万3000台の戦車と300機以上の戦闘機という大量の軍事装備を失ったロシア軍は、供給を必要としている。北朝鮮が供与した兵器には、長距離砲システム200基、KN23やKN24ミサイルなどの短距離弾道ミサイル100基以上、240ミリ口径の多連装ロケット砲50基、170ミリ自走砲または榴弾砲20基などが含まれる。KN23ミサイルは最大1トンの弾頭を搭載しており、ロシアの同等のミサイルより強力だ。
北朝鮮は2023年9月以降、1万5000個を超える貨物を出荷しており、その中には最大900万発の砲弾を含む数十億点の武器が含まれていたとみられ、ロシアの122ミリ砲弾と152ミリ砲弾の在庫を補充するのに貢献している。ウクライナは、ロシア軍が使用した軍需物資の7割が北朝鮮から供給されたものだとみている。この戦争は砲撃に大きく依存しているため、北朝鮮からの供給はロシア軍を支える力となっている。
だが、北朝鮮の兵器の中には信頼性が低く、古びたものもあった。同国から最初に送られたKN23弾道ミサイルは精度が不十分で、ロシアと北朝鮮の専門家が緊密に協力した結果、ようやく改善された。しかし、北朝鮮の武器製造は西側の規模や効率性には及ばない。したがって、北朝鮮による武器支援は長期的には持続できない可能性があり、主にロシア軍の再編成を支援するための暫定的な措置に過ぎない。
北朝鮮軍は作戦上の欠陥を抱えているものの、金総書記が多数の命を犠牲にしてまで兵士や武器を供給する用意があることは、ロシアにとって大きな助けとなっている。だがこれは、ロシアがウクライナとの戦争に自力で勝利する力がないことを示す証拠でもある。


