政治

2025.07.10 10:30

北朝鮮の兵士や武器に依存するロシア、戦場での弱体化が露呈

北朝鮮の首都平壌で会談する同国の金正恩総書記(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2024年6月19日撮影(Kremlin Press Office / Handout/Anadolu via Getty Images)

北朝鮮の首都平壌で会談する同国の金正恩総書記(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2024年6月19日撮影(Kremlin Press Office / Handout/Anadolu via Getty Images)

北朝鮮は先週、ロシア軍に協力するためにウクライナの前線に送り込む兵士の数を3倍に増やす計画だと報じられた。同国は昨年11月にすでに1万1000人の兵士を派遣しているが、向こう数カ月以内に北朝鮮から追加派遣される兵士の数は2万5000~3万人に上るものとみられる。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6月の記者会見で、同国北東部のロシアとの国境沿いにロシア軍が5万人の兵士を集結させていると説明。ロシアは今夏、新たな地上戦に向け、自国の占領下にあるウクライナ領の一部に北朝鮮兵を送り込む可能性があると示唆した。北朝鮮には最大15万人の追加部隊を派遣する能力があるが、これほど多数の部隊をシベリアを越えて輸送するにはロシアの航空機を改修する必要がある。

北朝鮮の国営メディアは初めて、ウクライナで戦う自国軍兵士の映像を公開し、すでに数千人が死亡したことを認めた。それにもかかわらず、北朝鮮はウクライナ侵攻への関与を強めている。北朝鮮にとって、ロシアに援軍を送ることは、同国からの支援を冷戦時代の水準にまで回復させるための長期的な投資の一環だからだ。北朝鮮はすでにロシアから食料と財政の支援を受けており、現在は陸海空の重要な軍事システムの改善に対する協力を求めている。同国がロシアに援軍を送り込むことで、両国は貿易上だけでなく戦略的な関係も築きつつある。

北朝鮮は2022年、ウクライナ東部の親露派勢力が支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認した数少ない国連加盟国の1つとなった。だが、北朝鮮のロシアに対する支持は、当初は単なる外交的なものにとどまっていた。

ロシアが2022年にウクライナ侵攻を開始して以降、注目を集める2つの首脳会談が開かれた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2023年9月、極東のボストチニー宇宙基地で北朝鮮の金正恩総書記と会談した。翌年6月にはプーチン大統領が異例の北朝鮮訪問を行い、包括的戦略パートナーシップ条約に調印した。この条約はいずれかの国が攻撃された場合に相互防衛を規定するもので、冷戦以来、両国間の最も強力な協定となった。

ロシアにとって、この協力から得られる利益は明らかだ。同国は兵士を必要としているのだ。ロシア軍は昨年、1日当たり1000人以上を失い、占領した土地1平方キロ当たり約100人の兵士が死亡した(ロシアはウクライナ領の約19%を支配している)。同年、ウクライナ軍がロシア西部クルスク州に越境攻撃を仕掛けた際にもロシア軍は撃退に苦戦し、同州だけで約15の大隊が失われた。ロシアは累計で79万人以上の死者を出しており、これはウクライナ側の死者数のほぼ2倍に当たる。

こうした犠牲を鑑みると、プーチン大統領は政治的に不人気な国内の動員に再び踏み切る危険を冒すことはできない。同大統領は昨年、18万人の兵士と150万人の現役軍人を増員すると約束したが、ロシア人以外の戦闘員を使うことで、軍を再編する時間を稼いでいる。ロシアはソマリア、シエラレオネ、キューバ、ネパールからも兵士を募集しているが、北朝鮮との協力の方が利点が多く、はるかに大規模な部隊を展開することができる。

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翻訳・編集=安藤清香

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