彗星の故郷
オールトの雲は直接観測されたことがないため諸説あるが、そのもっとも外側は太陽から10万au(1.58光年)の距離にあるとされる。また、その構造は「外オールト雲」と「内オールト雲」に分けて考える場合がある。外オールト雲は球形をしており、ゆで卵の殻、または白身部分のように描かれることが多く、太陽から2万~10万auという広大な領域にまたがると予想される。
内オールト雲は、太陽系惑星の軌道面ディスク(黄道面)から延長された、ドーナツ状に拡がる領域として描かれ、その領域は2000~2万auと予想される。オールトの雲という名称は、オランダのヤン・オールトがその存在を1950年に提唱したことによる。その後、1981年に内オールト雲のモデルが米国のジャック・G・ヒルズによって提唱されたため、内オールト雲は「ヒルズ雲」とも呼ばれる。
見えないオールトの雲の存在を彼らが提唱したのは、その領域から彗星がやってくるからだ。彗星は太陽の周りを周回しており、その軌道を計算すれば故郷を推定できる。その結果、多くの彗星は、海王星の外側にドーナツ状に拡がるエッジワース・カイパーベルトから来るものと、より遠方のオールトの雲から来るものに大別される。カイパーベルトから来るものは周期が短いため「短周期彗星」と呼ばれ、軌道の傾斜角が黄道面に近い。一方、オールトの雲から来る「長周期彗星」は、あらゆる傾斜角を持つことから、その出生地であるオールトの雲が球状だと予想できる。
とてつもなく壮大なスケール
オールトの雲をイラストで表す場合、太陽から海王星までの惑星群が極端に大きく描かれることが多く、それを鵜呑みにしてしまうとこの天体のスケールを誤認してしまう。
NASAが描く太陽系の構造図では、距離を示すメジャーの目盛りは等間隔に刻まれているが、太陽から遠ざかるにつれてその単位は10倍ずつ増えていく。そうしなければ1枚の絵に収めることができないからだ。ただし、こうした図では太陽系の構造は理解できるが、各天体の距離感や規模感を直感的に把握することは難しい。


