企画展、芸術祭、フェア、コレクションなど多彩な話題が飛び交うアートの世界。この連載では、毎月「数字」を切り口に知られざるアートな話をお届けしていく。京都駅に突如現れた写真壁画。そこに映る京都は、あなたの知っている京都だろうか?
京都駅の北側通路に4月11日、巨大な写真壁画が完成した。手がけたのはフランス人アーティストのJR。ルーブル美術館やピラミッドといった観光名所から、シエラレオネ、リベリア、インドなどのスラム街の建物の外壁まで、世界各地の公共空間を舞台に大規模な写真作品を展開する。
本作は、13回目の「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭」の展示のひとつ。市内14会場で開催するKYOTOGRAPHIE自体は5月11日までだったが、この作品のみ万博にあわせて10月半ばまで公開される。「JR クロニクル京都 2024」特別オープニングセレモニーでJRは「電車好きで、JRのファン。それに、京都へはみな電車でやってきて、ここから旅が始まる」と特別な場所への思いを語った。
町家や四条通りといった街並みに、舞妓、学生、ドラァグクイーン、学生、市長など、年齢もバックグラウンドも異なる多様な人々が、生き生きとした様子で写る。
総勢505人の撮影は、昨年秋、京都市内の8カ所で、彼が“ホーム”とも呼ぶ移動式のスタジオで行われた。「いつもグリーンバックで、同じライティング、同じフォーカスで撮る。誰かが誰かより重要になることがない。壁画のなかではみな平等なんだ」とJR。街ゆく人に声をかけて撮影したが、「それなら自分らしい服装で!」と別日に改めた人もいれば、参加者から数珠つなぎに「京都を表すならこの人を入れたほうがいい」と紹介された人もいるという。
どんなに人数が多くとも、被写体と言葉を交わしながら、その人らしい自然なポーズを引き出す。そのためか、みな緊張することなく楽しんでくれるのだという。
「鴨川で撮影したときにピクニックをしている家族がいて。説明をしたらわざわざシートごと移動して協力してくれた」とうれしそうに振り返る。撮影時にはそれぞれが語るストーリーも録音。生い立ち、京都との関係、将来の夢……展示会場でQRコードを読み込めば、その声も聞くことができる。



