経済・社会

2025.07.10 09:45

得意絶頂のトランプ大統領 関税交渉の答え合わせはたった3点

6月27日、ワシントンDCの連邦議会議事堂で、上院共和党の昼食会後、記者団に話すスコット・ベッセント米財務長官。(Photo by Al Drago/Getty Images)

6月27日、ワシントンDCの連邦議会議事堂で、上院共和党の昼食会後、記者団に話すスコット・ベッセント米財務長官。(Photo by Al Drago/Getty Images)

トランプ米大統領は日本からの輸入品に対し、8月1日から25%の関税を課すと発表した。トランプ政権は現在、日本からの輸入品に10%の関税を課している。9日まで発動が一時停止されていた相互関税の「上乗せ分」を合わせた24%を上回る水準になった。トランプ氏は日本以外の14カ国に対しても、韓国25%、インドネシア32%などの新関税率も公表した。

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米州住友商事ワシントン事務所の渡辺亮司調査部長はこの決定について「日本も含め各国との関税交渉が政権の思惑通りに進まないなか、トランプ大統領は事実上、8月1日まで3週間ほど交渉を延長した」との見方を示す。「高関税発動の可能性といった威嚇によって最大限の圧力をかけ、各国の譲歩を引き出すトランプ流の交渉手段でしょう」(同氏)。

これまで、何度も繰り返されてきた日米関税交渉がまとまらなかった背景について「日本としては特に参院選前に弱腰を見せられず、米国の圧力に屈したとも受け止められかねない安易な合意はできません。一方、米国は最終的にはトランプ大統領の判断といった難関があり、合意は容易ではありません。参院選後、日本のさらなる譲歩を期待していることがうかがえます」との見方も示す。ただ、「仮に25%関税が日本の主要な対米輸出品目である自動車に継続して課され、8月1日以降に25%関税が広範囲の品目に適用されれば、日本経済への悪影響は避けられない」(同氏)という。

また、ベッセント財務長官は6日、CNNで、米国の貿易赤字の95%を占める18カ国との交渉に集中する一方、貿易規模が小さい100カ国ほどには数日のうちに、新たな税率を通知する考えを示した。

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しかし、トランプ政権は、一方的に国別の税率を発表した「解放の日」の4月2日当時、交渉期限と定めた7月9日までの間、「90日間で90のディールを成立させる」と息巻いていたのではなかったのか。それが、現時点で合意が成立したのは、英国、中国、ベトナムのたった3カ国という惨状だ。このうち、中国は8月12日まで相互関税を緩和するという暫定期限を設けただけで、最終合意とは言えない。

また、そもそも米国は英国との間で貿易赤字に陥っていない。渡辺氏によれば、何としてもディールを成立させたいトランプ氏が深夜、スターマー英首相を叩き起こし、合意に持ち込んだという噂が流れている。その際、両氏のそばには交渉チームが同席していなかったという。また、「トランプ関税戦争に電光石火の反応、ベトナムを助けた北朝鮮との縁」で紹介したように、ベトナムのトー・ラム書記長は2019年2月の米朝首脳会談を通じ、トランプ氏と太いパイプを築いた。トランプ氏の一族が経営するトランプ・オーガナイゼーションは24年10月、トー・ラム氏の故郷、ベトナム北部フンイエン省に総額15億ドル(約2200億円)規模の投資を決めた。

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