経済・社会

2025.07.10 09:45

得意絶頂のトランプ大統領 関税交渉の答え合わせはたった3点

6月27日、ワシントンDCの連邦議会議事堂で、上院共和党の昼食会後、記者団に話すスコット・ベッセント米財務長官。(Photo by Al Drago/Getty Images)

現状は、トランプ氏が誇る「アート・オブ・ザ・ディール」とは程遠い。ベッセント氏はCNNで「(関税交渉の)相手がもたついている」と責任を押し付けたが、そもそも一方的に根拠のない税率を発表したのは米国で、交渉がうまくいくわけがない。
 
一方、米国内に目を転じれば、大型減税を盛り込んだ「一つの大きくて美しい法」が4日、成立した。トランプ氏は同日、ホワイトハウスの南庭で同法に署名、取り巻きの関係者が一斉に拍手し、大いに盛り上がった。トランプ氏は同法に難色を示した共和党議員らに対して圧力をかけ、成立を急がせただけに、まさに得意の絶頂だろう。

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ただ、渡辺氏は「いずれ、しっぺ返しがあるかもしれません」と語る。同法の減税対象は富裕層が中心で、社会保障や食料支援、メディケイド(低所得者などを対象とする公的医療保険)などの予算は削減される。「2024年大統領選で、トランプ氏に票を入れた人には低所得者層も多いとされています。メディケイドを利用しづらくなり、同プログラムを削減しないと選挙で公約していたトランプ氏に裏切られたと批判する人が出そうです」(渡辺氏)。

同氏によれば、米経済は依然、堅調に推移しているものの、トランプ政権の関税政策がインフレを引き起こして政策金利の引き上げにつながると、景気が冷え込む可能性が出てくる。トランプ氏による、一連の新たな関税率の設定について、渡辺氏は「経済悪化の一歩手前でトランプ大統領は怖気づき、関税政策を緩和する『TACO(トランプ氏はいつもびびってやめる)』現象が再び見られるのか注目しています」と語る

では、米国はこの状況に大いに心を痛め、伝統的な米国政治に回帰するのだろうかと言えば、そうでもないらしい。11月に行われるニューヨーク市長選で1日、NY州議会議員のゾーラン・マムダニ氏、民主党候補を決める予備選で勝利した。マムダニ氏は「反トランプ」を掲げたが、渡辺氏は「インフレ対策を重視した点や反エスタブリッシュメント・反エリートを掲げた点などは、トランプ氏に似ています」と語る。

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渡辺氏は「米国では今、エリートが作った社会が機能していないと考えている人が増えています。共和党も民主党も、エリートたちは貧富の格差などを解決できていません。超党派で自由貿易を推進した一方で、負け組になった労働者を十分に救済してきませんでした」と語る。

この状況に、民主党も悩んできた。24年大統領選で敗北した原因をうまくつかめず、次の大統領選への反攻のきっかけをつかめずにいた。そこに現れたのがマムダニ氏というアウトサイダーだった。

渡辺氏はマムダニ氏の勝利で「民主党は、過度な気候変動対策など急進左派政策よりも、庶民の生活を重視しなければいけないと考えたかもしれません」と語る。同氏によれば、民主党の牙城、カリフォルニア州では今月、住宅向けの環境審査を緩和する政策を発表した。「住宅不足で悩む国民の救済、次期大統領の座を狙うニューサム同州知事が、左寄りイメージから中道にシフトしたいという思惑などが込められているようです」(同氏)。

民主党は今後、トランプ氏を研究し、その政治手法を真似していくかもしれない。その先に待っているのは、さらに激烈な国民の分裂と憎悪の応酬かもしれない。

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