だが、ある意味ではプーチン大統領はすでに投獄されていると言ってよい。ロシアの航空機が欧米の領空を通過することを禁止され、世界の過半数を占めるICC加盟国によって手錠をかけられ、身柄を引き渡される可能性にさらされている状況下で、同大統領の移動の自由が制限されつつあるからだ。
ディッキンソンは、「プーチン大統領は最近、どこへ行くにも非常に慎重になっている」と言う。逮捕を免除するという確実な保証がない限り、同大統領は「ICC加盟国を訪問しない。それだけでなく、ICC加盟国で予定外の立ち寄りを余儀なくされる可能性のある長期の旅に出ることにも、乗り気ではないようだ」
ロシア軍の最高司令官であるプーチン大統領は通常、護衛用の戦闘機に伴われた大統領専用機イリューシン96型機で専ら飛行している。プーチン大統領を乗せた専用機が技術的な不具合で、ロンドンやブリュッセル、ローマやパリ、ストックホルム、東京やシドニーの空港に着陸せざるを得ないような緊急事態が発生した場合、同大統領はICCのあるハーグ行きの便に乗せられることになるかもしれない。それは片道の旅となり、同大統領をロシアの権力の座から永遠に追放することになるだろう。そしてひとたびICCの法廷に立たされれば、何世紀も前に建立されたウクライナの大聖堂や、そこに描かれたイコン(聖像画)に対するロシアの組織的な攻撃を指揮したプーチン大統領に対する、新たな一連の戦争犯罪容疑が追求されることになるだろう。
ICCの裁判官は「(ICCに関する)ローマ規程は、文化遺産に対する犯罪についての管轄権を同裁判所に与えている」と説明している。第二次世界大戦中のナチスドイツの戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判と同様、ICCの裁判官は宗教施設を「特別に保護された建造物」と見なしており、その意図的な破壊は戦争犯罪に相当すると強調した。


