2016年の米大統領選挙では10億ドルを超える資金がデジタル広告に注がれると予測されている。
調査会社の Borrell Associatesはその広告費の半分がソーシャシャルメディアに費やされると見ている。出稿先は多岐に渡るが、候補者らがフェイスブックに費やす金額は、ツイッターの15から20%以上だというデータもある。
選挙関連のアドバイス機関Upstream CommunicationのCOO、ジョン・メサンゲル氏は次のように述べる。
「候補者らがグーグルやYouTubeに予算を使う一方で、ツイッターのシェアは50%以下に留まっています。しかし、新たな広告機会を提供することで、ツイッターは売上を伸ばすチャンスと言えます」
「2012年の大統領選ではツイッターの広告は限定的なものでした」と、ツイッターの政治広告セールス責任者のジェナ・ゴールデンは語っている。ここ数年でツイッターはターゲット広告を強化し、次回大統領選での売上増大を狙う。
共和党有力候補のマルコ・ルビオ氏のデジタル戦略を担当する企業、Bask Digitalの担当者は次のように述べる。
「ツイッターはニュースと親和性の高いプラットフォームだ。それ故にディベート型の広告展開に適している。討論会などの番組中継においてツイッターは視聴者の第二のスクリーンとしての位置を確保している。議論のインフルエンサーにリーチできる機会が期待できる」
今回の大統領選挙でのデジタル出稿は前回、2012年の約6倍にのぼると見られている。ケーブルTV出稿が28%の増加、テレビ出稿が7%増なのと比較すると、急激な上昇だ。2016年の政治関連広告の総額は史上最高額の114億ドルに達すると見られている。
広告業界関係者によると「圧倒的優位に立つのがグーグルだ。候補者の名前をサーチしたユーザーにコンテンツを見せるアドワーズ広告はもはや不動の位置を築いた」とのこと。
しかし、ツイッターの売上拡大の可能性は大きい。2012年と比較すると同社はターゲティング機能を強化しており、候補者のウェブサイトを訪れたユーザーを寄付金のサイトやメールマガジンの申し込みサイトに誘導することが出来る。また、ユーザーのメールアドレスやアカウント名に応じた広告を出すことも可能になった。
さらに、最近発表した「TVターゲティング」機能では、テレビ放送が始まると同時にその番組に関連するキーワードやハッシュタグを自動的に収集。番組に関心を持つユーザーに効率的に広告を配信する。この広告は討論会やスピーチの生中継で特に威力を発揮すると見られる。候補者が際立った演説をした瞬間を狙い、寄付金を募るサイトへ誘導するのだ。
「現代の視聴者は選挙報道を見る際に、常にスマートフォンやラップトップを横に置いています。適切なタイミングで広告を打つことは、選挙活動を大きく前進させます」とツイッター社のゴールドマンは語る。
ツイッターではユーザーの性別、住所や関心に応じた広告の出し分けも可能になった。2012年時点では、ユーザーの検索行動に基づいた広告しか出せなかったのに比較すると格段の進歩と言える。
今年に入り動画広告も多くの候補者に利用されている。共和党のランド・ポール議員が電動ノコギリを振りまわして税制改革を訴える動画や、同じく共和党のリンジー・グラハム議員が対立候補の携帯電話を破壊する動画などは大きな注目を浴びた。
「現時点では候補者の主な関心は認知度の向上や献金の募集、効率的なメールアドレスの収集です。しかし、来年のスーパー・チューズデーを控え、今後はいかに有権者を選挙に連れ出し、投票させるかという方向に変わっていきます」とゴールドマンは話す。
「候補者らはユーザーのタイムラインに絶好のタイミングでコンテンツを投入できるようになりました。ツイッターは候補者らにとって、本当にパワフルなツールになったのです」とゴールドマンは続けた。