宇宙

2025.07.09 10:30

観測史上初、「2回爆発」した超新星発見 16万光年彼方の銀河から証拠

欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTを用いて撮影された超新星残骸SNR 0509-67.5の画像。オレンジ色は水素(Hアルファ線)、青色はカルシウムの分布を示している(ESO/P. Das et al. Background stars (Hubble): K. Noll et al.)

欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTを用いて撮影された超新星残骸SNR 0509-67.5の画像。オレンジ色は水素(Hアルファ線)、青色はカルシウムの分布を示している(ESO/P. Das et al. Background stars (Hubble): K. Noll et al.)

爆発を、1回でなく2回起こしたと見られる超新星が初めて発見された。超新星は、進化の最終段階にある恒星が引き起こす爆発現象だ。

NASAによると、超新星は極めて明るくて超強力な恒星の爆発であり、人類の観測史上で最大規模の爆発現象だ。この非常に珍しい二重爆発超新星は、「宇宙の泡」のような天体の超新星残骸SNR 0509-67.5を調べることによって発見された。SNR 0509-67.5は直径約23光年で、秒速約5000kmで拡大している。過去にNASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)で撮影した画像が得られていた。

超新星残骸SNR 0509-67.5は、かじき座の方向約16万光年の距離にある大マゼラン雲内に位置する。大マゼラン雲は天の川銀河(銀河系)を周回している矮小銀河の1つだ。SNR 0509-67.5はIa型超新星の残骸であり、このタイプの超新星は、血液に含まれる鉄などの鉄族元素の主要な生成源として知られている。さらには、天文学における距離測定のための標準光源として利用されているため、その発生メカニズムを完全に理解することが天文学者にとって極めて重要なのだ。

どのようにして超新星は2回爆発したか

Ia型超新星は、白色矮星と伴星の連星系で発生する現象だ。白色矮星は中・小質量星が核融合を終えた後に残る高密度の中心核で、伴星から吸い上げた物質が白色矮星の表面に蓄積し、ついには熱核爆発を起こす。だが、最近の研究では、少なくとも一部のIa型超新星は、爆発を2回起こすとする方がうまく説明できることが示唆されていた。この仮説では、白色矮星が伴星から吸い上げたヘリウムが白色矮星を取り巻くように蓄積し、不安定化して1回目の爆発を起こす。この爆発によって発生した衝撃波が、白色矮星のコアで2回目の爆発を引き起こし、最終的に超新星となるとしている。二重爆発の新発見は、この仮説を裏づけるものだ。

もし二重爆発が起きたとすると、超新星残骸にはカルシウムからなる独立した2つの球殻が含まれているだろうと、天文学者は予測していた。この2つのカルシウムの球殻が今回、南米チリにある欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTを用いた観測で見つかったのだ。この発見に関する論文は、2日付で学術誌Nature Astronomyに掲載された。

超新星残骸SNR 0509-67.5内のカルシウムの分布を示す画像。欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTに搭載の超広視野面分光装置MUSEでデータを取得。画像に重ねて表示した2本の曲線は、数百年前に核融合を終えた恒星から2回の爆発で放出された同心円状の2つのカルシウムからなる球殻の輪郭を示している(ESO/P. Das et al.)
超新星残骸SNR 0509-67.5内のカルシウムの分布を示す画像。欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTに搭載の超広視野面分光装置MUSEでデータを取得。画像に重ねて表示した2本の曲線は、数百年前に核融合を終えた恒星から2回の爆発で放出された同心円状の2つのカルシウムからなる球殻の輪郭を示している(ESO/P. Das et al.)
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翻訳=河原稔

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