架け橋としてのGeodesic Capital──ユニークな投資モデル
━━Geodesicのビジネスモデルについてお聞かせください。コアとなる目的や、他のVCとの違いは何でしょうか。
ルース:私たちは設立当初から「戦略的な価値を提供するには、まず経済的に成功しなければならない」と考えていました。そこで、デジタルトランスフォーメーションを推進する成長中・後期のスタートアップに投資し、日本市場への展開を支援しています。日本は洗練された、信頼の基盤を重要視する市場ですし、私たちのLP(リミテッド・パートナー)は主に日本の大企業で、単なる資金提供者ではなく、出資するスタートアップ企業にとっての顧客や戦略的パートナーでもあります。これまで複数のファンドで約10億ドルを調達してきました。
私たちの強みは「空中戦」と「地上戦」の両方を展開できる点です。米国スタートアップのCEOと日本の経営陣をつなぎ、東京拠点のチームが現地での提携を支援する。この二重のアプローチが非常に効果的なのです。
バサラ:最近立ち上げた「Alliance Fund」は、これまでのモデルをさらに発展させたものです。サイバーセキュリティ、宇宙、経済安全保障などの重要分野に焦点を当て、財務的リターンと同時に、日米の戦略的優先事項との整合性も重視しています。
昨今の地政学的変化や技術の急速な進化を受け、政府間ではさまざまな動きが拡大していますが、それだけでは不十分です。民間セクターも中心的な役割を果たすべきであると考えています。Alliance Fundは、まさにそのギャップを埋めるための仕組みです。
世界の潮流と日本への再注目
━━2000〜2010年代、シリコンバレーでは日本よりも中国への関心が高まっていました。近年の地政学的変化によって、シリコンバレーのビジネスリーダーの日本に対する見方は、何か変化が感じていますか?
ルース:はい、間違いなく変わってきました。Geodesicを始めた頃、「なぜ日本なのか?」とよく聞かれました。当時の関心は中国に集中していましたから。しかし、日本は米国企業にとって常に重要な市場でした。信頼性が高く、価値観を共有し、知的財産も尊重される国です。中国市場が難しくなる中で、多くの経営者が日本の価値を再度認識し始めています。
たとえば私は現在Salesforce(セールスフォース)の社外取締役を務めていますが、日本は米国以外では最も重要な市場の一つだと言えます。確かに日本市場は複雑ですが、だからこそ私たちの価値が発揮されるのです。米国における「日本はビジネスが難しい」という古い固定観念は、もはや時代遅れだと思います。
━━日本側から見たシリコンバレーへの関心にも変化はありますか?
ルース:はい、日本のビジネス界・政府関係者の間で、特にAIの台頭を背景に、シリコンバレーとの連携の重要性がさらに認識されつつあります。サンフランシスコは今やAIのグローバル・ハブですし、日本国内でもイノベーション・エコシステム構築への動きが活発化しているのは喜ばしいことです。Alliance Fundは、両国の技術革新を後押しし、国境を超えた協業を促進する役割を果たしています。
バサラ:日本国内の文化的変化も大きいですね。2010〜2012年にルース大使と共に働いていた頃は、アントレプレナーシップの推進が重要な優先課題の一つでしたが、当時は起業やイノベーションの意義から説明する必要がありました。今では様変わりし、国・地方を挙げてスタートアップやリスクテイクへの関心が高まっています。小池都知事のような地方自治体の取り組みや、若者の意識の変化には目を見張るものがあります。


