企業間の力学が浮き彫りに――強制的な選択を迫られる構造
アップルの内部コミュニケーションに基づく報道によると、同社は従来型の検索における独占的地位を意図的に利用していたとされている。
また、グーグルの親会社であるアルファベットの内部資料を調査した記者たちは、グーグルがパブリッシャーにより好条件を提供する代わりに、「AIによる学習にコンテンツを使わせること」を条件に検索結果への掲載を認めるという、まるで悪魔契約のような取引を強いている可能性を指摘している。つまり、同意する側が自らの破滅に加担している構図である。
その一方で、グーグルの擁護派は「Offerwall(オファーウォール)」という新しい収益モデルを提示している。
Offerwallとは、広告以外にも読者から直接収益を得る手段をパブリッシャーに提供するものだとされている。だが、それも「読者がオファーを受け取ってくれたら」の話である。
マイクロペイメント(少額決済)はなぜ機能しないのか?
もうひとつの理論的な解決策として挙げられるのが、「記事単位でのマイクロペイメント(少額課金)」である。
だが、業界関係者の多くは、この方法がほぼ確実に失敗すると考えている。その理由は複数ある。
まず、ニュースというものは「セット商品」として認識されているという点がある。
「もし、現在読者1人から年間100ドル(約1万4600円)の定期購読料を得ているとすると、その人が1記事あたり20セント(約29円)を支払うだけになれば、失われた収益を補うには500人が必要になる」と、Columbia Journalism Reviewのジェームズ・ボールは書いている。「メディアごとに数字の差はあるが、計算の厳しさは変わらない。さらに、哲学的な問題もある。新聞や雑誌は『軽い記事』と『重い記事』の混合体として構成されてきた。高コストな記事も安上がりな記事もあるが、パッケージで販売することでバランスが取れていた。それを分断してしまえば、その理論は崩壊する」
ちなみに、まだほとんど試されていない方法としては、超ローカルなニュース組織を低予算で構築し、かなり細かな地域情報をスマートフォンアプリを通して安価に提供するというアプローチもある。
だが、おそらく多くの人が法的責任を恐れて踏み出せないでいる。


