AI

2025.07.09 12:30

AIが広がる世界の学校教育、その陰で深まる「AIリテラシー」格差

Moment Makers Group / Getty Images

正しい活用に向けた競争

世界中の教育の責任者たちは遅れをとるまいと躍起になっている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の行動計画「教育2030アジェンダ」は包括的で公平、人間中心のAIツールを優先的に導入するよう学校に求めている。経済協力開発機構(OECD)と欧州委員会(EC)も「若者が自信をもって、かつ批判的にAIシステムを理解・使用するために必要な知識やスキル、姿勢を概説する」フレームワーク、AILitを導入した。

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しかし、導入のペースは同じではない。AIを全面的に禁止している学校もあれば、明確なガイドラインやトレーニングなしに導入している学校もある。だが、スハイルは、このまちまちな状況をリスクであると同時に進歩の兆しでもあると考えている。「どの教育制度もスタート地点は異なる。今重要なのは、テクノロジーだけでなく能力を構築できるかどうかだ」とスハイルは指摘する。「ソフトウェアの不具合を修正するパッチで組織的な問題を解決することはできない」。

この警告は、テックの行き過ぎを警戒する教育指導者たちの共感を呼ぶものだ。「テックを活用し過ぎると、教師は本来集中すべき学習の促進と好奇心の育成を疎かにしてしまうリスクがある」とダフィーは言う。

それでも、AIを導入するだけでなく、責任を持って導入するという世界的な競争が始まっている。教師の訓練方法から生徒の評価方法まで、各国はAIを使いこなす世界における学習のあり方を再考している。

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今後の課題

現在の課題は、誰がAIを利用できるかということだけでなく、AIをどのように訓練し、教育制度が適応できなければ誰が取り残されるかということでもある。スハイルは、AIが教育分野でどのように活用されるかを形成するという貴重な機会を我々は今手にしていると考えている。それは、プラットフォームだけでなく、人材や政策、目的に投資することを意味する。

世界中でAIリテラシーが義務化され、AIを前面に打ち出した学習ツールが台頭していることは、学習がAIネイティブの時代に突入しつつある世界の教育の構造的変化を間違いなく示している。しかし専門家が指摘するように、導入だけでは進歩とはいえない。重要なのは、誰が恩恵を受けるか、ツールがどのように公平に導入されるか、そして実際により良い成果をもたらすかどうかだ。

「問題はAIが学校に導入されるかどうかではない。すでに導入されている」とスハイルは言う。「今問われているのは、我々が構築しているシステムが学習するすべての人に役立つものなのか、それとも一部の人のみが恩恵を受けるものなのかだ」。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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