イスラエルは6月の「十二日戦争」でイランに対して得た戦略的優位、なかでも航空優勢を確保し続ける意思を示している。イスラエルはそのために宿敵イランに対して「空の占領(air occupation)」を行う可能性もある。これはほんの数週間前には想像すらしがたかった動きだ。
「地上戦の不在」が十二日戦争の特徴
イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は6月末、X(旧ツイッター)への投稿で「イランに対する強制措置計画の作成」を軍に命じたと明らかにし、それには「イスラエルの航空優勢の保持、イランの核開発の進展およびミサイル生産の阻止、イランによるイスラエルに対するテロ活動支援への対応」が含まれると説明した。
「われわれはこのような脅威を阻止するために継続的に行動していく」とも言明した。
カッツは「空の占領」という言葉こそ使わなかったものの、イスラエルが航空優勢の保持や、イランによるこれらの試みの阻止を図るとなれば、必然的に空の占領が求められることになるかもしれない。
イランに対する空の占領に類する先例としては、パレスチナ自治区のガザ地区やレバノンに対するイスラエルの航空支配、サダム・フセイン政権下のイラクに対する米国主導の飛行禁止区域(NFZ)の設定(1991〜2003年)などが挙げられる。だが、イスラエルがイランの領空を占領し、それを長期にわたって維持しようとする場合、兵站面の課題はこれらよりも難しいものになる。
中東専門の学術誌ミドルイースト・クォータリーの編集者ジョナサン・スパイヤーが指摘するように、「地上戦という要素の不在」が十二日戦争の特徴だった。イスラエルの北の隣国レバノンに拠点を置くイスラム教シーア派組織で、イランの軍事的に最も強力な代理勢力だったヒズボラは、戦争全体を通じて参加できなかった。これに先立つ2024年9月から11月にかけての紛争で、イスラエルによって致命的な打撃を受けていたからである。イスラエルは、イラン国内に潜伏して戦略目標に対して短距離ドローン(無人機)を飛ばす工作員を除けば、圧倒的に航空戦力に頼ってイランの戦略目標や指導部目標を攻撃した。



