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2025.07.08 12:00

イスラエルはイランの「空の占領」に動くか 負担大きく危険な行動

イランの首都テヘランで2025年6月15日、イスラエルの攻撃を受けて炎上するシャフラン石油貯蔵施設を眺める人たち(Stringer/Getty Images)

イスラエルは現在、中東で過去10年以上にわたってイランやその味方、代理勢力と裏で繰り広げていた対立よりも、はるかに直接的にして重大な戦争に入っている。なぜなら、カッツが言及した「強制措置計画」は、イランの防空能力の再建を阻止するだけでなく、ミサイルや核の脅威と見なされるものに対して「継続的に」先制攻撃を加えることを含んでいるからだ。

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イスラエル空軍は今回の戦争で、イラン国内の深部にある目標に到達する能力を見事に示した。その際、戦闘機への給油では、老朽化したボーイング707空中給油機に大きく頼っている。この作戦がイスラエル空軍にとって能力の限界を試されるものだったのは間違いなく、同軍はその過程でいくつかの世界記録も打ち立てている。しかし、イスラエルがこのような長距離空爆作戦をイランに対して継続的に実施していこうとすれば、たとえより小規模なものであっても、兵站面で非常に大きな課題に直面するだろう。それは危険でもある。とくに、イスラエルが何年にもわたり、イランのおそらく地下にあるミサイル・核関連施設を“モグラ叩き”のように叩き続ける展開になれば、その危険性はさらに増す。

1991年の湾岸戦争後、米国はイラクの北部と南部に広大な2つの飛行禁止区域を設定した。そして、フセインの残忍な政権を打倒した2003年の地上侵攻まで、両空域のパトロールを続けた。これらの飛行禁止区域は、1990年代を通じて米空軍関係者の間でイラクの空の占領と呼ばれていた。米国はそれを維持するために、10年以上にわたり年平均3万4000回にのぼる出撃(ソーティ、延べ任務飛行)を行っていた。にもかかわらず、これらの飛行禁止区域は、イラク政府に対して、疑われていた大量破壊兵器(WMD)計画に関する査察に全面的に協力させることもできなければ、イラク空軍や防空部隊の残存勢力によるパトロール中の航空機迎撃の試みも、実際に撃墜こそされなかったとはいえ、防ぐことができなかった。最終的に、イラクが大量破壊兵器計画を実際に破棄していたことが明らかになったのは、2003年の侵攻によってだった。

イラクでの飛行禁止区域の設定で、1990年代の米国とその同盟国は、現在のイスラエルよりもかなり有利な状況にあった。米空軍は当時、近隣のトルコやサウジアラビアにある戦略航空基地を使用でき、米海軍は、トマホーク巡航ミサイルを搭載した空母や駆逐艦をイラク近海の攻撃しやすい水域に展開できた。イスラエルは現在、イランに関してこうした選択肢をまったく持たず、イスラエル空軍は格段に遠くまで出撃しなくてはならない。しかもイランの国土は広大であり、地形も多様だ。加えて、イスラエルはイランが核兵器を秘密裏に製造・隠匿していないことを決定的に確認するために、2003年の米国のような地上侵攻を行うこともできない。

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イスラエルが最終的にイランの空の占領を試みようとすれば、1990年代に米国がイラクで直面したのと同様の、むしろそれよりも大きな課題や問題に直面する可能性がある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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