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2025.07.08 12:00

イスラエルはイランの「空の占領」に動くか 負担大きく危険な行動

イランの首都テヘランで2025年6月15日、イスラエルの攻撃を受けて炎上するシャフラン石油貯蔵施設を眺める人たち(Stringer/Getty Images)

レバノン南部の場合、イスラエルは2000年、18年にわたり占領していた「安全保障地帯」から軍を撤退させたあと、2006年夏にヒズボラと再び短期間交戦した。イスラエルは地上侵攻したが、決定的な成果を収められないまま終結した。

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とはいえ、レバノンの調査団体「エアプレッシャー・インフォ(AirPressure.info)」が2022年に公表した集計によると、イスラエルの航空機は2007年から2022年までの間に、レバノンの領空を2万2111回侵犯した。

「合計飛行時間は、日数に換算すると3098日に及ぶ」とエアプレッシャー・インフォは当時報告している。「(イスラエルの)ジェット機とドローンは延べ8年半にわたり(レバノンの)空の占領を続けたということだ」

戦間期のレバノンでも、戦闘機やドローンの音が空から聞こえるのは珍しくなかったが、イスラエルはこの間、ガザ地区でハマスやイスラム組織パレスチナ・イスラム・ジハード(PIJ、イスラム聖戦)の目標を繰り返し空爆する一方、レバノンでヒズボラの目標を空爆することはなかった。2023年10月7日以降、それは変わった。ヒズボラの構成員を狙ったポケベル一斉爆発攻撃や、ヒズボラの最高指導者ハサン・ナスララの暗殺があった2024年9月には、イスラエルは同国の空軍史上、それまでで最大規模の空爆作戦を実施し、ヒズボラの地対地戦略ミサイル備蓄の大半を撃破した。

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イスラエルは2024年11月にヒズボラと停戦に合意したものの、現在に至るまでレバノン各地でヒズボラへの空爆を継続している。たとえば6月27日には南レバノンのナバティエで、ヒズボラの地下軍事施設と疑われる場所を空軍がバンカーバスター(地中掩体破壊)爆弾で空爆した。この攻撃に際して集合住宅1棟も被弾し、女性1人が死亡、11人が負傷している。

十二日戦争は6月24日に正式な停戦が成立し、以来イスラエルによるイランへの空爆やイラン領空の侵犯は確認されていない。しかし、イスラエル国防軍がカッツの計画を近く実行に移した場合、状況は急速に変化する可能性がある。

「六日戦争」やイラクの飛行禁止区域の教訓

歴史的には、1967年6月のアラブ・イスラエル戦争(第3次中東戦争)が、ある種の先例として参考になるかもしれない。「六日戦争」とも呼ばれるこの戦争では、イスラエルがアラブ諸国に対して驚異的な勝利を重ね、領土を征服したあと、不安定な停戦でひとまず終結した。だが、それから1カ月もたたないうちにイスラエルとエジプトとの「消耗戦争」が勃発し、1970年8月まで続いた。これは迅速でも決定的でもない戦争だった。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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