これまでも酪農業の倒産が相次ぎ、たびたび国産生乳不足に伴うバター不足などが発生した。政府が補助金対策などを打ち出し、生乳増産を要請するなどしたが、コロナ禍により一転して給食での牛乳の消費量が急減し、逆に生乳が余るようになった上、飼料の価格が高騰するなど、悪循環が続いていた。
そのような中で、帝国データバンクの調べでは、2025年上半期の酪農家の倒産が4年ぶりにゼロとなっており、通年でも過去最少になる可能性もあるとされている。

これは、2024年の業績において、赤字だった割合が26.3%と、2022年度の54.1%をピークに減少傾向で推移しており、安定した収益確保の目処が立ちつつある酪農事業者が半数を占めていることから、経営が安定しつつあるようだ。

人件費など諸経費の抑制に加え、輸入に頼ってきた粗飼料を自前で調達することによる飼養コストの削減といった、酪農事業者の経営努力が要因として挙げられる。そのほか、2022年11月以降に生乳の買い取り価格が複数回引き上げられたことで、一時の厳しさが緩和されたことも要因だろう。
経営環境が改善したとは言え、不安定な飼料価格に加え、就業者の高齢化・後継者不足の問題、老朽化した設備の更新など、まだまだ課題も多い。食品等流通法が3月に閣議決定したことで、生産コスト増に対応した価格転嫁がしやすくなるが、値上げが消費者に受け入れられるかは不透明であり、値上げは容易ではない。安定した経営と持続的発展をどう両立させていくか、酪農関係者の手腕が問われることになる。
出典:帝国データバンク「酪農業の倒産動向(2025年上半期)」より



