サイエンス

2025.07.08 12:30

猛暑なのになぜ若者は長袖パーカー? フードの下に隠れた10代の真実を科学者が再考、米国

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心理学者で、特別支援教育の専門家でもあるマドゥマンティ・マジュムダルは2024年、パーカーを着ることをテーマにしたティーンエージャーとの対話の内容をまとめたブログ記事を公開した。タイトルは「The Hoodie Culture: Fighting insecurities and vulnerabilities one hoodie at a time(パーカー文化:不安と無防備さにパーカーで対抗する)」だ。

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マジュムダルの知見は、ティーンエージャーの親なら誰でも覚えがある事実に符号するものだ。このブログ記事では、同調圧力や自信の問題のほか、各個人の意見が取り上げられている。マジュムダルは次のように書いている。「繰り返し耳にした言葉に、私は驚いた。具体的には、『セーフティーネット』『安全』『無防備』『快適』『自信が持てる』といったものだ。パーカーを着ることで、こんなにも深い情動や感情が引き起こされるとは!」

筆者が最初にこの話題にのめり込んだときと同じように、同氏は新たな視点を手にしたのだ。

けれども気象・気候学者としての筆者は、まだ説明を必要としていた。非科学的で憶測まじりの個人的な観察結果で恐縮だが、夏場や暑い日にパーカーを着ているのは、たいてい10代の男の子のようだからだ。

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そんなとき、2020年に『Journal of the Korean Society of Clothing and Textiles』に掲載された論文が目にとまった。この研究は、ティーンエージャーが自己申告する寒さへの耐性と、冬季における教室の内外での着衣習慣に着目したものだ。

全体として、男女の着衣習慣にあまり差はみられなかったものの、女子生徒はより寒さに敏感で、そのためより多くの衣服を着用する傾向にあった。ほかの研究によれば、男性は熱への曝露への耐性が高く、深部体温の上昇幅が小さい傾向が示されている。

ただし、これらの知見には交絡要因があり、解釈には慎重を期すべきかもしれない。少年少女が成長するにつれ、内分泌系の性差により、男性は女性よりも多く汗をかくようになることを示す研究があるのだ。発汗には体を冷やす作用がある。

筆者はこのテーマの専門家ではないので、結局はいまある知見に従うしかない。ここで言いたいのは、私の憶測まじりの観測結果を説明してくれそうな、男女の気温への耐性の違いを説明する有力な文献はないということだ。そこで再び、心理的サポートの仮説に話を戻そう。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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