ランキングの意外な結果
今回の調査でもう1つ「驚き」だったのは、これまで物価や賃金で各種世界ランキングの上位にめったに入らなかった米国の都市が軒並み順位を上げ、世界一物価の高い都市として常に上位に君臨しているスイスのジュネーブやチューリヒとトップの座を争っていることだ。スイスは近年、インフレ率を最低水準に抑えている国の1つで、スイスフランは世界で最も安定した通貨に数えられている。同国では金融や製薬といった高収入の産業が発達している。
米ニュースサイト「ビジネスインサイダー」は、ニューヨークやボストン、サンフランシスコの物価はジュネーブやチューリヒと同水準になりつつあると報じた。今回の報告書を執筆したドイツ銀行のジム・リードは、「2012年にこの報告を開始した当時、米国の都市は他の先進国の都市と比較して生活費が安く、物価や所得で世界の上位10位以内には入っていなかった」と述べた。
ニューヨーク中心部は世界で最も住居費が高く、3部屋付きのアパートの家賃が平均して月8500ドル(約122万8000円)になる。家賃や食費が高い上位11都市に含まれた米国の他の都市は、ボストン、サンフランシスコ、シカゴ、ロサンゼルスだ。同国の物価高について、報告書は、ドル高や、国際化しつつも依然として米国主導のIT業界などを理由として挙げつつも、この傾向は少なくとも価格面ではピークに達している可能性があると指摘した。
報告書の3つ目の「驚き」は、10年後には世界3位の経済大国になるともみられているインドが、急成長を続けながらも依然として他の国々と比べると物価が安い点だ。
日常の小さな楽しみにかかる費用
同報告書には、日常のちょっとした楽しみの価格に焦点を当てて各都市を比較する項目もある。例えば、カプチーノの価格はチューリヒが最も高く、グラスワインの価格はシンガポールが最高だった。
では、アップルのスマートフォン「iPhone」の最新機種を最も安く購入できる場所はどこだろうか? 韓国の首都ソウルだ。さらに、最も安くデートできる場所はどこかと言えば、インド南部のベンガルールだ。
世界で最も住みやすい都市に選ばれたルクセンブルクだが、1つの項目に関しては芳しくない評価を得た。5キロのタクシー料金がチューリヒとパリに次いで世界で3番目に高いことだ。
過去25年間で購買力平価が大幅に低下した日本
各国経済における相対的な物価水準の長期的な推移を見ると、日本の購買力平価(PPP)は2000年当時、米国を抑え世界1位だった。しかしそれ以降、日本は23位下落し、1990年代にピークを迎えた過剰な経済の代償を払うことになった。
日本が転落の一途をたどる中、ニュージーランドは20位、ルクセンブルクは14位、オーストラリアは14位、サウジアラビアは12位、チェコは11位、アラブ首長国連邦(UAE)は11位上昇した。米国も2000~10年の間に16位順位を下げたが、今年はスイスとイスラエルに次ぐ3位にまで回復した。


