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2025.07.07 12:30

「AI音楽のグラミー賞」か?6000万人がAIで楽曲制作するなかコンテストの応募受付始まる

Shutterstock.com

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人工知能(AI)を活用して作曲をしている人は、賞金を獲得するチャンスだ。

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AIの助けを借りて作られた音楽のクリエイターを表彰するコンテスト「フューチャー・サウンド・アワード」の応募受け付けが、7月1日に始まった。世界中から応募を募り、審査では作品のインスピレーションやプロセス、音声、歌詞、ビートなどの要素が吟味されるほか、専用ランキングでの順位も加味される。AIをめぐっては倫理面や法律面での議論が活発になっており、このコンテストでは著作権で保護された素材を使っている作品は失格となる。上位入賞者3人には、賞金計1万ドル(約144万円)が贈られる。

「表現力のある歌詞やChatGPTを駆使しているだけではないもの、編集されたもの、少し人間味のあるものを求めている」とコンテストの審査員ジェフ・ナンは語る。英ロンドンを拠点に活動する音楽プロデューサーのナンが手がけた曲は、ディズニーやJPモルガンなどに使用されている。「AIの活用に焦点を当てたコンテストとはいえ、人間らしさからポジティブな影響を受けるはずだ」

このコンテストはAIの創造性を競う「ワールド・AIクリエイター・アワード」が後援しており、バーチャルのモデルやスポーツ選手、DJなどがホストをするサブスク制プラットフォームFanvue(ファンビュー)が運営している。昨年はAI美人コンテストを初めて開催し、そして今、音楽に進出している。

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「フューチャー・サウンド・アワードは音楽の大衆化を真に祝うものであり、このアワードをAI音楽界のグラミー賞に成長させるという大きな野望を持っている」と、FanvueのAI部門責任者であるナルシス・マリンキャットは声明で述べている。

このコンテストの開催は、アマチュアからプロまでミュージシャンがツールとしてAIをますます活用するようになっている中でのものだ。電子音楽業界の年次カンファレンス「インターナショナル・ミュージック・サミット(IMS)」のビジネスレポート2025年版によると、2024年には6000万人超がAIソフトウェアを使って楽曲を制作したという。しかし、AIをコラボ相手として受け入れるミュージシャンがいる一方で、AIが自分たちのキャリアや創造性の本質に影響を及ぼすことを恐れるミュージシャンもいる。

今年初め、ケイト・ブッシュやアニー・レノックス、イモージェン・ヒープ、ビリー・オーシャン、リズ・アーメッドら1000人を超えるミュージシャンが英国の著作権法改正案に反対の声を上げた。楽曲の著作権者が積極的にオプトアウトしない限り、AI開発企業が無断で作品をAIモデルの学習データに利用できるようになることを懸念してのことだった(法案は6月に可決された)。また、あるメタルバンドは昨年、AI生成のアルバムジャケットで批判を浴び、その後、新しいものに差し替えた。あるファンはAI生成のジャケットは「本物の、生きているアーティストに対するひどい侮辱」だと切り捨てた。

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翻訳=溝口慈子

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