アジア

2025.07.05 09:00

日本の「MAD」な国債市場、「マッドマン」トランプの新たな破壊に身構える

riphoto3/Shutterstock

日本は現状すでに前年同月比3.7%上昇というインフレに直面しており、これは日銀の目標値2%の倍に迫る高さだ。したがって、何かインフレを悪化させるような要因が新たに加われば、日銀に対して金融政策の引き締め圧力が高まる状態にある。一方で日本経済は今年1〜3月期に前の期に比べて年率換算で0.2%縮小しており、4〜6月期にはさらに深いマイナス成長に陥る公算が大きい。そうしたなかで大幅な利上げをすれば、効果以上に弊害が大きいかもしれない。

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景気停滞下で物価高が進むスタグフレーションの懸念は米国でも取り沙汰されているが、この最悪の経済的ジレンマに陥る可能性は日本のほうがもっと高いかもしれない。もしスタグフレーションになれば、日本政府が支出拡大に動く可能性は飛躍的に高まる。だが、支出を拡大すれば債券利回りに上昇圧力がかかり、先進国で最も重い債務負担を抱える日本の借り入れコストは高まりかねない。

日本国債については、他国の国債に比べて市場の変動などの影響を受けにくいとの見方もある。日本国債の残高の約88%が国内で保有されているというのがその理由だ。これは「相互確証破壊(MAD)」的な力学を生む。どういうことかというと、日本国債の利回りが2%や3%、あるいはそれ以上に上昇していけば、その保有者である国内の銀行や保険会社、日本郵政グループ、年金基金、その他のファンド、さらに増加し続ける退職者層は手痛い含み損を被ることになる。それを避けるために、国債を売却するよりも保有し続けるという集団的なインセンティブがはたらくというわけだ。

だが、トランプが世界の金融システムに新たなショックを与えかねない措置を検討するなか、日本国債市場はまさしく危険地帯に置かれている。同様に、いわゆる「円キャリー取引」も危機に瀕している。

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四半世紀におよぶゼロ金利政策によって、日本は世界最大の債権国になった(編集注:2024年末時点ではドイツがトップに浮上)。それにともなって、世界中の投資ファンドは、低金利の円で資金を借りてより高利回りの資産に投資するのが常態化した。この取引がうまくいかなくなると、あちらこちらでヘッジファンドが破綻するのはそのためだ。

良いニュースは、日本国債の入札に現在は十分な需要が集まり、市場の不安を和らげ、「債券自警団」をなだめられていることだ。悪いニュースは、トランプが「貿易戦争を再び偉大に」すると決めれば、すべてが一気に崩れ去りかねないことである。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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