その手法は現在も変わらない。K-1のイベントで矢吹に会いたければ、関係者席ではなくグッズ物販コーナーにいけばいい。いつもではないが、スポンサーと話すより、ファンの表情を間近に見られるところで観察しているはずだ。
焼肉店の売り上げを月200万円から月1500万円に復活させた噂を聞きつけ、狂牛病問題で経営不振に悩む焼肉店経営者が「うちを買ってくれ」と日参するようになった。そこから再建屋として名を轟かせ始め、前述のような事業も手がけるようになるが、本人は「仕方なく」を強調する。
「最初は断りますよ。デューデリジェンスをすると検討していると思われるから、それもしない。でも10回断ってもまた来る人がいる。そうなると仕方ないよね。道端で看板が倒れているのを見たら直すでしょ。それと同じで、素通りはできない」
みんなが避ける事業はリスクが大きいが、再生させたときのリターンも大きい。それを狙って救済しているのではないが、損な役回りを引き受けてしまう性格が結果的に矢吹を成功者に引き上げた。
ジョンとヨーコの家を購入したのは昨年の秋。どうしていくかはまだ決めていない。「事業と同じで、出口戦略は考えていません。計算すると、そもそも買わないのがいちばんいいんだから(笑)」。
明日は明日の風が吹く。私財に関しても成り行きまかせが矢吹の流儀である。

矢吹 満◎明豊エンタープライズ会長兼社長。2000年に28歳で麻布ビルディングを設立。以降、続々と事業再生を手がける。主なものとして、11年「東京ガールズコレクション」運営母体を買収し、23年に東証グロース上場。14年から「K-1」の運営を手がけ、22年、那須川天心と武尊の対決で総売り上げ50億円超を記録。


