宇宙

2025.07.05 10:00

2029年にヒトが火星に立つ可能性、その障壁は開発遅延かトランプか?

(C)SpaceX

(C)SpaceX

「ヒトを火星に送り込む」という計画は、非現実的に感じるかもしれない。しかし、すべてがイーロン・マスク氏の計画どおりに進めば、4年後の2029年にそれは実現する。

マスク氏は5月末、スペースXの火星探査計画の詳細を発表した。彼は過去にも火星に関して多くコメントしているが、使用機材やスケジュールなどを含め、これほど具体的なプランを公表したのは初めてのことだ。

火星の地表をオプティマスを歩くイメージ図(C)SpaceX
火星の地表をオプティマスを歩くイメージ図(C)SpaceX

その計画によると、スペースXが開発する超大型宇宙機「スターシップ」を2026年後半に5機打ち上げ、2027年前半には火星のアルカディア平原に着陸させる。ヒトの代わりに「オプティマス」を複数搭載し、火星地表を歩かせる。オプティマスとは、テスラが開発する二足歩行ロボットだ。

続く2028年から29年にかけてはスターシップを20機打ち上げるが、そこにはヒトが搭乗する可能性がある。つまり、もっとも早ければ、ヒトは2028年後半に火星に向けて出発し、2029年前半に火星の大地に立つことになる。ただし、「最初はオプティマスによる着陸ミッションを2回行い、3回目で人類を送るかもしれない」と、マスク氏はコメントしている。

5月下旬、社員に対して火星探査計画をプレゼンするマスク氏(C)SpaceX
5月下旬、社員に対して火星探査計画をプレゼンするマスク氏(C)SpaceX

さらに2030年から31年にかけては100機、2033年には500機のスターシップが火星に送り込まれる。このプランを実現するためにスペースXは現在、テキサス州にある私設拠点「スターベース」とケープカナベラル(フロリダ州)に、スターシップの製造施設「ギガベイ」を建設しており、将来的には年間1000機のスターシップを製造するという。マスク氏は自身の事業の実現に関し、「もっとも早ければ」と、その展望を楽観的に語るのが一般的だが、その多くは遅延するものの、ほぼ確実に実現している。

26カ月に1度のウィンドウ

各ミッションにおけるタスクは、以下のように公表された。トン数とは、スターシップ1機当たりのペイロード(積載量)を意味する。

2年2カ月ごとに訪れる打ち上げウィンドウごとのタスク詳細。「LANDERS」は打ち上げ機数、「PAYROAD PER SHIP」は1機当たりのペイロードを示す(C)SpaceX
2年2カ月ごとに訪れる打ち上げウィンドウごとのタスク詳細。「LANDERS」は打ち上げ機数、「PAYROAD PER SHIP」は1機当たりのペイロードを示す(C)SpaceX

●2026年
・打ち上げ機数:5機(各10トン)
・火星に到達可能であることを証明する
・最小限のローバーを送り、最大限の学習(データ取得)を目指す
・火星への移動と着陸に必要な主要な技術を実証する

●2028-29年
・打ち上げ機数:20機(各75トン)
・初期インフラを着陸させる
・火星資源の利用可能性を確認する
・着陸エリアを整備する
・クルー滞在のための装備を届ける

●2030-31年
・打ち上げ機数:100機(各100トン)
・資源を採掘し、推進剤を生成する
・道路と離発着パッドを建設する
・居住施設を建設する

●2033年
・打ち上げ機数:500機(各500トン)
・発電と蓄電の設備を拡張する
・地球からの独立性を高める
・火星の資源を採掘・処理する
・火星全域を網羅する移動手段を構築する
・火星全域を網羅する通信網を構築する

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編集=安井克至

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