「火星地表までの打ち上げコストは、現在では1トン当たり約10億ドル(約1440億円)かかっているが、火星に持続的な都市を建設するには100万トンの物資が必要だと予想する。つまりそのコストは1000兆ドル(約14京4000兆円)に達するが、現在の米国のGDPが29兆ドル(約4180兆円)であることを考えれば、それは非現実的な数字といえる」
「そのためスペースXでは、スターシップの打ち上げを1000倍効率化させようとしている。それが実現すればコストは1兆ドル(約144兆円)まで圧縮でき、40年かけて分散すれば年間250億ドル(約3兆6000億円)未満に低減できる。このプランであれば既存の経済を圧迫することなく、人類の活動の場を多惑星に広げることができるだろう」
スターシップの開発
この計画が成功するか否かは、すべてスターシップにかかっている。スターシップの飛行テスト(Integrated Flight Test、IFT)は2023年4月以降に9回行われ、7回目(2025年1月)からはその仕様がバージョン1(V1)からV2に刷新されている。そして2025年末には、さらにハイパワーなV3への移行を目指している。
スターシップV3は火星への本番機と位置づけられる。この機体に搭載される新型エンジン「ラプター3」は、過去に例がないほど構造が洗練化され、これまで以上のペイロード能力と比推力(燃費)を発揮する。V2までは第2段に6基のエンジンが搭載されたが、V3では9基に増設。同エンジンを第1段と2段に計42基搭載することでスターシップの推力は大幅にアップする。
ただし、今年初めにV2に移行してからトラブルが続いている。V2の初飛行となった第7回テスト(2025年1月)では、第1段ブースターである「スーパーヘビー」の切り離しから数分後にスターシップが爆発し、第8回(3月7日)では弾道飛行中に通信が途絶。第9回(5月28日)では、燃料漏れが発生して制御不能に陥り、大気圏再突入時に機体が崩壊した。さらに第10回の飛行テストを目前に控えた地上燃焼テストでは、突如として機体が爆発し、マッセイと呼ばれる試験サイトも一部も破壊されている。


