宇宙

2025.07.05 10:00

2029年にヒトが火星に立つ可能性、その障壁は開発遅延かトランプか?

(C)SpaceX

火星への軌道を示す。青が地球、オレンジが火星。ともに逆時計方法に公転(C)SpaceX
火星への軌道を示す。青が地球、オレンジが火星。ともに逆時計方法に公転(C)SpaceX

スターシップが約2年間隔で打ち上げられるのは、火星と地球の公転周期の違いによるものだ。地球は太陽を1年で1回公転するが、火星は約1.9年(687日)かかる。そのため火星に宇宙機を送る際は、地球が火星を追い越す少し前に打ち上げ、最短かつ最小のパワーで火星に到達させる。その間隔は約26カ月(2年と2カ月)。2026年であれば10月22日から11月7日の間に打ち上げる必要がある。打ち上げに適したこの期間は「打ち上げウィンドウ」と呼ばれる。

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100万トンで火星都市を建設

マスク氏がこの計画を推進する目的は、人類を火星に入植させ、「多惑星生物化(Multiplanetary Specie)」させることにある。「どんな文明も単一の惑星に依存するより、多惑星文明であるほうが10倍、あるいはそれ以上長く存続する可能性がある」という考えは、マスク氏が一貫して語ってきた思想だ。またマスク氏は、火星に居住区を建設する意義とシーケンスを以下のように語る。

「初期段階では多惑星生活に必要な知識を学び、スターシップの改良を続けることで、最終的には数十万から数百万人を火星に運べるようにする。火星への渡航を望むなら誰もが行ける状況が理想的だ」

「この計画では、地球からの補給が止まっても、火星都市が独自に成長できる状態を目指す」

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「地球に問題が発生すれば火星が救い、火星に問題が起これば火星が救う。双方の惑星が自立し、強靭であることは、文明の長期的存続にとって非常に重要だ」

将来的な構想としては、1機当たり200トン以上のペイロードを搭載し、地球の各サイトから1日に10機を打ち上げる。その結果、各ウィンドウで150万トンを地球低軌道(LEO)に上げ、そのうち25万トンを火星に届ける(C)SpaceX
将来的な構想としては、1機当たり200トン以上のペイロードを搭載し、地球の各サイトから1日に10機を打ち上げる。その結果、各ウィンドウで150万トンを地球低軌道(LEO)に上げ、そのうち25万トンを火星に届ける(C)SpaceX

この計画を実現するには、火星への1トン当たりの輸送コストを極力下げることが不可欠だという。この点に関してマスク氏は、以下のように概算する。

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編集=安井克至

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