経営・戦略

2025.07.16 08:45

任せられる人は日本に5人だけ? 26年に義務化迫る「最高物流責任者」どこから探す

Getty Images

多くの企業ではサプライチェーン全体が「調達」「生産」「生産管理」「物流」といったように縦割りになっている。そして調達部門は原材料の仕入れコスト削減、生産部門では計画した生産数の達成といった具合に、それぞれにKPIが課される。しかし、部門ごとに目標は異なるため、利害の齟齬が生じる。例えば、生産部門が生産効率を高めるために大量生産をしようとしても、物流部門からは、「保管コストが上がる」と反対の声が出る。

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CLOにはそうした各部門の意向と、さらには取締役の意向とを調整し、全体最適化をすることが求められる。キャリアでいえば、複数領域を経験していることが望ましく、俯瞰して全社を見る視点も必要だ。

CLOに必要な資質は「EQ」

そのうえで梶野氏は、属性よりも重要なCLOの資質として「EQ(心の知能指数)」を挙げる。EQは、自分や他人の感情を正確に認識し、管理して調整する能力だ。職場や人間関係においての高いパフォーマンスやリーダーシップを発揮するために必要な能力として注目されている。

このEQをCLOの資質に重ね合わせ、梶野氏は5つの要素を挙げた。「アンテナ力」「夢の解像度」「共感を生む熱量」「異なる強みの融合」「しなやかな胆力」だ。

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「変化の兆しに『アンテナ』をはることで、まずは自社と社会の間に生じているギャップを把握できます。そのうえで、自社の物流がどう変われば会社がよくなるか。CLOは、その『夢』を解像度高くワクワクする形で描く必要があります。それを実現するには、“この人となら実現したい”と共感させるようなCLOの熱量が不可欠です。

そして、実はそれを担うのは自社の人ではなく、例えば保険業界の営業マンでもいい。保険営業で培った、顧客の変化をいち早くキャッチして信頼を築く能力はCLOとして生かせるでしょう。このように外部から、『異なる強み』を持った人を入れ、融合させていくのもアリです」

梶野氏は過去のキャリアで、大手外食チェーンの店舗配送を変革した経歴を持つ。2018年、トラックのドライバーが店内への納品作業をしていたが、長期目線で無理のない働きができるよう、原則店舗スタッフが担うように運用を変更した。

今でこそ、建物の外で商品を引き渡す運用は標準的だが、当時は浸透していなかった。実際に運用方法を変えていくなかでは全国8会場約200人の関係者に対して説明するために各地域を巡回したこともあったというが、その際には「『店舗も人の確保が大変なんだ』とご意見をいただくなどした」と振りかえる。それでも根気強く説明をし続け、実現させた『胆力』こそ、今、CSCOたるゆえんと言えよう。

今後、こうしたCLOを社内で育成するには、組織は「2年程度毎の意図的なローテーションの実施」、個人は「普段交わらない人との積極的な関わりをもつこと」が必要だと梶野氏は語る。

「職務を固定したまま人材を育てようとする従来の人事制度は見直すべき時期にきています。とはいえ、単にローテーションさせるだけでは意味がありません。役割や狙いを明確に設計することが前提です。一方で、個人レベルでも変化のきっかけはつくれる。キャリアチェンジに挑戦したり、セミナーに参加したりすることで、視野が大きく変わるはずです」

法対応としてCLOを置くだけでは意味がない。CLOは、「モノを運ぶ」責任者ではなく「企業価値を設計する」存在だ。その視座を持ったロジスティクス人材をどう育て、企業のなかでどのように選んでいくか。2026年以降、日本企業に突きつけられる問いはそこにある。


田中なお◎物流ライター。物流会社で事務職歴14年を経て、2022年にライターとして独立。現場経験から得た情報を土台に、「物流業界の今」の情報を旺盛に発信。企業オウンドメディアや物流ニュースサイトなどで執筆。

文=田中なお 編集=露原直人

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