サイエンス

2025.07.04 18:00

アフリカから北欧までノンストップ、60時間飛び続ける渡り鳥

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2. 日中に飛行高度を上げ、捕食者を回避する

ヨーロッパジシギが驚異的な渡り行動を示すもう一つの理由は、空中捕食者の回避にあり、1日の時間帯によって飛行高度を変えることでこれを実現している。エレオノラハヤブサなどの猛禽類は、日中に中・小型の鳥を活発に捕食する。これらの捕食者が巡回飛行する高度は通常3000m以下だ。とりわけ、夜の休息から覚めた獲物が再び飛び立つ、夜明けの前後に活動がさかんになる。ヨーロッパジシギは、こうした危険な領域のはるか上空まで上昇するため、ほとんどの捕食者にとって手出しできない存在だ。

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興味深いことに、ヨーロッパジシギの昼夜の飛行高度サイクルは、リスク管理戦略を反映している。比較的安全な夜間に低高度を飛行したあと、夜明けに上昇し、捕食者との遭遇率がはるかに低い領域に到達する。その後、日没とともに捕食者の活動が低下すると、酸素濃度が高く、エネルギー効率よく飛行できる領域まで下降し、夜間飛行を行う。このように、上昇と下降を含む飛行パターンは、単に体を冷やすためだけでなく、身を守るためでもあるのだ。

3. 飛行高度の調整は、地上の目印を利用したナビゲーションにも役立つ可能性

効率的な渡りのためには、持久力だけでなく、正確なナビゲーションも必要だ。ここに第3の要素が関わってくる。ヨーロッパジシギは、地上の目印を利用して進行方向を見定める必要があるのだ。

日中、ヨーロッパジシギは高高度を飛行することで、より広い視野で総合的に地上の景観をとらえられる。こうして視野を補強することは、進行方向を維持し、生態系のなかの重要なランドマークを特定して、サハラ砂漠や地中海といった茫漠たる地形のなかでコースを調整するのに不可欠なのかもしれない。

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多くの鳥が、星や太陽の位置、地球の磁場、さらには嗅覚的手がかりまで利用してナビゲーションを行うことが知られているものの、視覚的目印はやはり重要だ。日中に飛行高度を上げることで、ヨーロッパジシギは、遠くの河川や海岸、その他の見慣れた地形を見つけることができ、これが数千kmにわたる長旅における正確なナビゲーションに役立っているのかもしれない。

視界が悪くなる夜間には、こうした目印を視認するのは難しいため、酸素の薄い高高度を飛行する理由はあまりない。そのため、ヨーロッパジシギはもっと快適な高度まで下降して、エネルギーを節約するのだ。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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