「目標」について、誰もが間違った思い込みを持っている。多くの人が、毎年1月になると、これからの1年で成し遂げたいことをせっせと書き留める。目標に締め切りを設定し、かなえたい夢を可視化したビジョンボードを作成し、さらには責任を持って実行しようと、これらを公開することさえあるだろう。だが、2月になるころには、大半の目標は忘れ去られてしまう。そして12月になると、「この1年はどこに消えたのか?」と呆然とするのだ。
目標とは、生産性や進歩のフリをしているが、実は洗練された先延ばしの術にほかならない。時間をかけて完璧な目標を作成し、やり始める。あとはモチベーションが続き、やり遂げられると期待する。しかし、こうした目標が達成されることはめったにない。
米スクラントン大学の研究チームによると、新年の目標を達成できない人の割合は全体の8割を超えるという。
「目標を立てること」より、ずっと優れたアプローチがある。それは、望む姿になれるような「システム」を構築することだ。その人のアイデンティティとしっかり結びついた毎日の行動が、成果をもたらしてくれるのだ。
目標設定をやめ、「なりたい自分になるシステム」を作ろう
目標を立てると、生産的なことをしているように感じられるが、実際にはまったく前進していない。計画を立ててそれを磨き上げ、完璧に仕上げたとしても、その間、実際には何の変化も起きていない。
一方、日々のアクションにフォーカスしたシステムがあれば、これが積もり積もって大きな結果を出すことができる。これなら、やる気が湧いてくるのを待つことはない。はるか先のゴールラインをにらんで、現在地を確認する必要もなくなる。
目標というものは、「今の自分に欠けているもの」に焦点を当てている。これに対してシステムは、その人の今の姿にフォーカスしている。「20ポンド(約9kg)痩せたい」と口にすれば、その発言は自分が今、体重が多過ぎることを強調する。一方、「私は毎日運動する」と宣言すれば、その言葉通りの人物になる。結果は必然的についてくるはずだ。
では、これを実行に移すための方法について、解説していこう。
1. 求める結果をすでに手にした人のように行動する
アイデンティティは行動を牽引する。行動は結果につながる。余計なことを考えず、アイデンティティの形成に集中すれば、その他のことはすべて収まるべきところに収まるはずだ。
まずは、「理想の自分」を定義する3つの行動を選んでみよう。例えば富が欲しいなら、「富を築いている人」を定義してみよう。すると、「収入を得ることに集中する」「自動的に投資できる仕組みを作る」「お金について学ぶ」といった、3つの行動が導き出されるはずだ。
こうしたシフトを実行に移せば、現在の預金残高に関係なく、たちまちあなたは「富を築いている人」になる。
まずは、自分のアイデンティティをアップグレードするのが最初だ。現実はあとからついてくる。理想の自分を定義することで、今からやるべきことが明確になるからだ。



