Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は7月号(5月25日発売)より、「クリュッグ グランド・キュヴェ172エディション」。フレッシュな酸味やミネラル感、香ばしいフレーバーやクリーミーなテクスチャーの1本だ。
つくりうる最高級のシャンパーニュを、天候に左右されることなく毎年送り届ける。それがクリュッグの創業者ヨーゼフ・クリュッグの夢であり、その夢を現のものとしたのが今日の「グランド・キュヴェ」だ。最新のエディションは172。
この数字は創業者の夢の再現回数を表す。
クリュッグ グランド・キュヴェの卓越性が、その精妙なアッサンブラージュ(ブレンド)にあることは論をまたない。しばしばシンフォニーに喩えられるこのシャンパーニュの創造にあたり、醸造チームは毎年400種類ものベースワイン(原酒)をテイスティングする。ベースワインのひとつひとつがヴァイオリンやフルートの演奏家であり、そのテイスティングはいわば、シンフォニーを奏でるオーケストラのオーディションに等しい。
かくして2017年の春に172エディションのアッサンブラージュを決定した際、醸造チームが選抜したベースワインの数は146種類。それは11の異なるヴィンテージにわたり、最も古いベースワインは1998年にまでさかのぼるという。
そして、最低6年間におよぶ瓶内熟成の時を重ね、味わいの多層性と奥行きにおいて、グランド・キュヴェは最も豊かな表現力を秘めたシャンパーニュとなる。その豊かさとは、英語でいうところの“generosity”であり、日本語を用いるなら寛容さとなるだろう。クリュッグでは毎年、ひとつの食材を選び、アンバサダーを務める世界中の著名シェフとともに料理とのペアリングを追求しているが、ポテトやトマトはともかく、ペッパーやフラワーといった難題でも調和を実現するのは、これもグランド・キュヴェがもつ“寛容さ”ゆえであろう。
しかしアンバサダーのひとり、「ル・サロン・プリベ」(東京・麻布台)の成田一世シェフは、「クリュッグとのペアリングはエモーショナルなものでなければならない」と主張する。グランド・キュヴェの寛容さゆえ、いかなる料理も合うのは当たり前。さらに人の感情を揺さぶるような驚きやときめきなくして、真のペアリングなど成立しないというわけだ。
鍵となるのは料理の複雑さ。その秘密をあれこれ詳らかにするのは憚られるが、グランド・キュヴェのフレッシュな酸味やミネラル感、香ばしいフレーバーやクリーミーなテクスチャーといった複雑性をひと皿に凝縮させること。それによってシャンパーニュと料理が違いに共鳴し合い、壮大なシンフォニーが響き渡るのだ。
クリュッグ グランド・キュヴェ 172エディション

容量|750ml
セパージュ|ピノ・ノワール 44%、シャルドネ 36%、ムニエ20%
価格|¥45320(箱なし・希望小売価格)
問い合わせ|MHD モエ ヘネシー ディアジオ 03-5217-9777



