カルチャー

2025.07.11 16:45

9割を海外で売る世界第2位ジンROKU〈六〉 、「設備投資65億円の工場」の中身

(写真提供:サントリー)

製造工程も実にユニークだ。一般的なジンは全素材を混ぜて一つの釜で蒸溜するが、ROKUでは原料ごとに複数の釜で作り分け、最終的にブレンドする。まるで和食の炊き合わせのような繊細な技法で、「Japanese Craft Gin」の真髄を表現している。

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品質へのこだわりも徹底している。桜花は神奈川の農家で収穫されてから浸漬まで、わずか26時間。

その様子を描いた短編動画『ROKU THE 26 HOURS』からもわかるように、切実なまでに旬の瞬間を捉える感性が、世界市場での評価を支えているのだ。

筆者もブレンド前の原酒3種と完成後のROKUを試飲させてもらったのだが、ブレンド後の完成品には、時間差でさまざまな素材の風味が柔らかに姿を現し、まさに“ブレンドの妙”を感じられた。口に含んでからの香味の変化、アフターにほどよい苦味やスパイシーさが残る余韻の長さには、ワインにも似た要素を感じた。

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(筆者撮影)
(筆者撮影)

ジンが映し出す「やってみなはれ」の未来

ジン市場の活況はうかがい知っていたが、実際に新工場を見学し、その覚悟を見た思いだった。ジンという酒類が持つ「自由度の高さ」と「伝統への敬意」は、まさに同社の「やってみなはれ精神」を体現できる舞台なのだろう。和の素材を活かしたユニークさ、原料の調和を追求した日本人ならではの精巧なブレンド技術は、日本のものづくりへの誇りすら感じさせてくれるものだった。

65億円という投資の重みは、単なる生産能力の拡張を超えている。「つくる」と「伝える」の両輪で市場を創造・拡大していく強い意志の表れだ。見えないクラフトの価値をいかに人々の心に届けるか─この挑戦の行方が、日本、そして世界のジン市場の未来を照らしていくに違いない。

文=水上彩

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