行かなかった理由は「時間がない」
一方、百貨店を訪問しなかった理由のトップは「時間がなかった」で61%。短い旅程で効率的に動きたい訪日客にとって、百貨店は「余裕があれば行く場所」にとどまっているようだ。
実際、利用率の高かった買い物スポットは「コンビニ」「ドン・キホーテ」「ドラッグストア」がそれぞれ8割以上の利用率だった。買い物の際、気軽さと時間効率が決め手になっていることがわかる。この傾向は「体験型の買い物」であっても「時短」と「アクセス」も条件となってきたことを示している。特に短期滞在者にはその傾向が強く出るだろう。
百貨店を知るきっかけは「偶然」と「SNS」
百貨店を知った経路でもっとも多かったのは「通りがかり」が53%。とはいえ「SNS投稿」「旅行サイト」「YouTubeなどの動画」など、オンライン経由の情報も高い割合を占めていた。
また、百貨店のブランド別の認知については、「高島屋」「三越」「大丸」といった全国的な百貨店は、認知・利用率ともに上位を占めていた。
ただし、各ブランドの違いがしっかり認識されているとは言い難く、「知っているから安心して行く」という動機が大半を占めていた。
興味深いのは、ここにも「言語圏による違い」が見られたことだ。

繁体字圏では、高島屋や三越といった老舗全国ブランドの認知度が圧倒的。一方、韓国語話者では、大丸と阪急・阪神が並んでトップとなり、関西圏を拠点とするブランドが特に支持されている。その理由は明確ではないが、旅行の導線や地域ごとの滞在時間なども影響していると考えられる。
「知っているから」ではなく、「行きたいから」へ
インバウンド消費は「物を安く買う」から、「その国ならではの価値を持ち帰る」へと移ってきている。百貨店に限らず、インバウンド消費の今後は「日本でしか味わえない買い物体験」の設計が求められそうだ。


