「セルフカフェ」という無人カフェが全国に増えている。自動販売機でドリンクを買うだけで気軽に利用できる空間だ。電源やWi-Fiも完備されていて、仕事や勉強にもってこい。2023年に第1号店をオープンしてからわずか2年ほどで店舗数は45件以上に増え、この6月で利用者数は6万人を超えた。その魅力はどこにあるのだろうか。
「セルフカフェ」は、愛知県を中心にグランピングやバーベキューの施設を運営する2018年創業のウッドデザインパークが2023年から展開している事業だ。店舗はほとんど愛知と大阪に集中しているが、千葉県と岩手県にも1店舗ずつ、さらに岩手にもう1件と東京に1件がまもなくオープンする。

アプリでの登録など面倒なことはなく、ただそこへ行って飲み物を買えば、店員の目を気にすることもなく、いつまでも居られるというのが最大の特長だ。「家だと集中できない」、「カフェは混んでいて落ち着かない」、「図書館は時間制限がある」といった声に応える場だとウッドデザインパークは説明している。店員がいないことで、利用者の心理的負担が軽減し、心地よい社会的距離感が保たれるため、Z世代やミレニアル世代のメンタルヘルス面で高く評価されているということだ。

利用者は、勉強に利用する学生、仕事場にしている社会人のほかに、学習塾などに通う子どもの送迎の合間の休憩に利用する主婦も多いという。また20時以降の利用者が2024年から1.7倍に増えたため、同社は営業時間の延長を検討している。今後は「日常生活の中にあるインフラ”としての定着」を目指し、東京進出、店舗の増席、個室ブースの設置、有料プランの導入などの取り組みを加速するという。
人口過密で他人の目がやたら気になる窮屈な日本社会で、貴重なパーソナルスペースが安価に気楽に確保できる場の需要は大きそうだ。



