しかし、サクセスストーリーはほかの分野にもある。例えばロボット分野では、Anybotics(エニーボティクス)が2024年末に6000万ドル(約86億2000万円)、RIVRが2024夏に2200万ドル(約31億6000万円)を調達した。また気候テック、医療技術、バイオテクノロジーも、スイスのディープテック産業の重要なサブセクターであり、半導体と量子コンピューティングもまた重点分野だ。
投資家たちは、スイスにおけるスタートアップと実績がある企業との関係強化も指摘している。
Accel(アクセル)のパートナー、アンドレイ・ブラソヴェアヌは、こう述べる。「特に興味深いのは、スイス企業がテクノロジーを先取りし、ETHZやEPFLのような世界トップクラスの学術機関からスピンオフした企業と積極的に連携し、設計パートナーとして先端技術の市場投入を支援している点だ」
その結果、スイスのディープテック企業への投資は増加し続けている。報告書によれば、2024年の資金調達額は19億ドル(約2730億円)で、2023年の14億ドル(約2000億円)から増加した。さらに、2025年は23億ドル(約3300億円)の資金調達が見込まれている。ファウンダーフルのシュテックルは、「スイスはヨーロッパのイスラエルだ」と考えている。
Walden Catalyst Ventures(ウォールデン・カタリスト・ベンチャーズ)のパートナー、ニコラ・オトレは、「スイスはディープテックのグローバルな一大勢力になった」と主張する。「エニーボティクス、Scandit(スキャンディット)、Climeworks(クライムワークス)といったスイスのサクセスストーリーは、スイスの優れた学術、強力な知的所有権(IP)文化、産業リーダーとの緊密な連携など、さまざまな要因が集合した結果だ」
スイスに拠点を置く時価総額10億ドル(約1440億円)超のユニコーン企業には、オトレが言及したスキャンディットとクライムワークスに加えて、Crispr Therapeutics(CRISPRセラピューティクス)、Proton(プロトン)、Sonar(ソナー)などが含まれる。しかし、報告書の執筆者は、成長の兆しを見せ始めた新興企業にも、同等の期待を寄せている。報告書では、クリーンテック分野のDePoly(デポリ)、AI専門のLakera(ラケラ)、バイオテクノロジー分野のLimmaTech(リマテック)、航空技術分野のVoliro(ヴォリロ)などを挙げている。
世界知的所有権機関(WIPO)のグローバル・イノベーション・インデックス(GII)共同編集者であるシャチャ・ウンシュ=ヴィンセントは、「チューリッヒ、バーゼル、ローザンヌ/ジュネーブ地域にある、スイストップクラスのイノベーション・クラスターは、既存の強みと比類のないスキルベースを生かし、医療技術、バイオテクノロジー、ロボット工学、AIアプリケーションなどの分野での再配置と強化に取り組んでいる」と話す。「これにより、世界的なイノベーションの波が到来したとき、スイスはその最前線に立つことになる」


