技術革新で世界をリードする地域を尋ねられたら、ほとんどの人は米国のシリコンバレーや大西洋の対岸にある英国のケンブリッジ、オックスフォード、あるいはイスラエルを挙げるだろう。しかし最新のデータによれば、もう一つの地域が静かに台頭している──スイスだ。このデータによれば、スイスは世界で最も刺激的なディープテック・エコシステムの仲間入りを果たしている。
Deep Tech Nation Switzerland Foundation(ディープテック国家スイス財団)、Dealroom.co(ディールルーム・ドット・コー)、Startupticker(スタートアップ・ティッカー)、ベンチャーキャピタル投資会社Founderful(ファウンダーフル)とKickfund(キックファンド)が発表した「スイス・ディープテック・リポート2025年版」によれば、スイスのディープテック企業は現在、合わせて1000億ドル(約14兆3600億円)を超える企業価値を創出している。また、スイスは1人当たりのベンチャーキャピタル投資額でヨーロッパ1位、世界3位にランクインしているという。
ファウンダーフルの創設パートナーであるアレックス・シュテックルは、さらに大きな変化が待ち受けていると主張する。「過去5年間の動向に基づくと、今後5年間でさらに大きな成長が見込まれる。今後の展開は驚くべきものになるだろう。私たちは現在、指数関数的な成長が見込まれるエコシステムにおいて、ごく初期段階にあるディープテック企業200社を追跡している」
この報告書における「ディープテック」とは、起業家によるイノベーションではなく、学術研究や科学研究開発から生まれた技術を指す。この点におけるスイスの強みは、世界有数の科学大学であるスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)とローザンヌ校(EPFL)があることだ。これらの大学は、英国のオックスフォード大学とケンブリッジ大学を除けば、ヨーロッパのどの大学よりも多いスピンアウト企業を生み出している。
これらの大学は授業料無料で、留学生の場合も低額の手数料を支払うだけで済むため、世界中から学生を引き付けている。こうした人材の流入は、世界有数のテクノロジー企業がスイスに拠点を置く理由にもなっている。グーグル、マイクロソフト、メタ、エヌビディアはスイスで大規模な事業を展開しており、最近ではOpneAIやAnthropic(アンソロピック)といったAI(人工知能)のリーダーも参入している。
AIは確実にスイスの物語の一部となっており、Neural Concept(ニューラル・コンセプト)やEthon.ai(イーソン・ドット・エーアイ)などのスタートアップが、過去1年間でそれぞれ2700万ドル(約38億8000万円)、1660万ドル(約23億8400万円)の資金を調達している。
Air Street Capital(エア・ストリート・キャピタル)の創業パートナーであるネイサン・ベネクは、「チューリヒは静かにAIの拠点になった」と述べている。「グーグル、メタ、アップル、マイクロソフトなどの企業に支えられた、世界トップクラスの技術者、研究者の人材プールがあり、ETHZを中心に野心的な学術コミュニティーが形成されている。この都市には、AIファースト企業の創出に最適なエコシステムがある」



