アート

2025.07.09 14:15

体験はいかに共有されうるのか? 小島秀夫とニコラス・ウィンディング・レフンの展覧会

“Satellites” by Nicolas Winding Refn with Hideo Kojima,Prada Aoyama Tokyo, 18.4 – 25.8.2025, Photo Daisuke Takeda, Courtesy Prada

“Satellites” by Nicolas Winding Refn with Hideo Kojima,Prada Aoyama Tokyo,  18.4 – 25.8.2025, Photo Yasuhiro  Takagi, Courtesy Prada
“Satellites” by Nicolas Winding Refn with Hideo Kojima,Prada Aoyama Tokyo, 18.4 – 25.8.2025, Photo Yasuhiro Takagi, Courtesy Prada

展示空間の一角には、小部屋に仕立てられた更衣室のようなスペースがある。そこにはカセットプレーヤーが設置され、周囲には複数のカセットテープが山積みになっている。テープには、AIによって翻訳・再構成されたレフンと小島の対話や、映画のサウンドトラック、断片的な音素材が収録されており、ヘッドフォンで自由に聞くことができる。

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この展示では、映画やゲームのように時間とともに進む作品を、空間そのものとして作り変えている。そこに決まった意味や答えはなく、来場者が断片的な映像や音声から、自分なりの物語や意味を見つけていく。

それはまるで、ひとりひとりが自分の感性で作品を”仕上げる”ような体験だ。展示を見ているというより、自分もその中で新しい何かを生み出しているような感覚になる。

これまでレフンは『ドライヴ』『ネオン・デーモン』など、静寂と色彩に満ちた映像世界を通じて人間の衝動を描いてきた。一方の小島は、シリーズ累計6千万本以上を売り上げた大ヒットゲームシリーズなどを通じて“つながり”をめぐる壮大な物語を創造。6月に発売されて話題になっている新作『DEATH STRANDING 2:ON THE BEACH』では、”海辺”を舞台に、分断された世界を再接続するというテーマがさらに拡張される。

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Satellites” by Nicolas Winding Refn with Hideo Kojima,Prada Aoyama Tokyo,  18.4 – 25.8.2025, Photo Yasuhiro Takagi, Courtesy Prada
Satellites” by Nicolas Winding Refn with Hideo Kojima,Prada Aoyama Tokyo, 18.4 – 25.8.2025, Photo Yasuhiro Takagi, Courtesy Prada

ふたりが織りなすこの会話劇は、メディアの境界を越えるだけでなく「どのように経験が共有されうるか」という問いにも挑む。物質と非物質、存在と不在、アナログとデジタル。「SATELLITES」が浮かび上がらせるのは、それらの間にある、まだ言葉にならない領域だ。

レフンと小島の通信が交わされているあいだに、ぜひ耳を澄ませてみてほしい。展示は2025年8月25日まで開催されている。

展覧会基本情報
展覧会名:SATELLITES
会期:2024年5月24日(金)〜8月25日(日)
会場:プラダ 青山店 5階(東京都港区南青山5-2-6)
開館時間:11:00〜20:00(最終入場19:30)

文=青山 鼓

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