200年以上の歴史をもつグレンモーレンジィ蒸留所。そこから生み出される至高の液体は、世界中のスコッチファンをとりこにしてやまない。幅広くその魅力を伝えるために「Open to all」を掲げ、フローラルでエレガント、かつ華やかな香りが際だつシングルモルトを作り続けている。その魅力の秘密と戦略を、CEOであるキャスパー・マクレーに聞いた。
グレンモーレンジィの蒸留所の歴史を紐解くと、1843年にスコットランドのハイランド地方でウィリアム・マセソンが建立したものに行き着く。なぜその地を選んだのかというと、ターロギー・スピリッツという非常にきれいな湧き水があったからだ。
1887年にエドワード・テーラーが、スコットランドで最も背の高いポットスチル(蒸留器)を導入し、その時代に最先端の技術であったスチームコイラーやコンデンサーを入れ、今のグレンモーレンジィの基礎が築かれた。
CEOのキャスパー・マクレーが参画した経緯を聞くと「父の一番好きなウイスキーだったのです。また過去に、英国王室の仕事をしていたことがあるのですが、本当に格調の高いものに触れることができ、そのなかで、改めてグレンモーレンジィの素晴らしさを再確認したためです。私のCEOとしての役目は200年以上も続いてきたこの素晴らしいブランドの保護者であり、その伝統を守り続けることによって、これから先も200年間続いていくように努力していくことです」と。
グレンモーレンジィがフローラルでエレガントである理由
グレンモーレンジィの味わいは、どうしてあんなにエレガントでフルーティなのであろうか。その秘密をマクレーに聞いた。
まず一つがミネラル分の多い自然な湧き水にあるという。ミネラル分が多いことが、発酵に対して有利に働くそうだ。
そして何より5mを超える背の高い銅のポットスチルに秘密があるという。通常は3mほどであるというから相当なものだ。しかも、直径は小さい。小さければ小さいほど、銅と接触する部分が多くなり、ピュアな液体ができる。なぜなら銅の成分が、ウイスキーの純度を決めるからだ。そして、それだけの高さまで蒸気が到達して、初めてコンデンサーに移るのだが、不純な化合物は5mまで到達できずに落ちてきてしまう。一番粒子の軽い本当に純粋な物質だけが到達することができる。だからこそ、華やかな香りが際だち、シルクのように滑らかでフローラルな味わいになるというわけだ。

3つ目がカスク(樽)。フローラルな軽いテイストを求めているので、基本は上質なアメリカンオークのバーボン樽を使用するが、最後にシェリーカスクやワインカスクに液体を触れさせてフィニッシュすることで、より深みと複雑味が出せるのである。グレンモーレンジィはこうしたカスクフィニッシュに最初に取り組み始めた蒸留所でもある。

そうした試みの多くに、世界屈指のウイスキークリエイターとして知られ、グレンモーレンジィと、同社が買収したアードベッグの最高蒸留・製造責任者を務めるビル・ラムズデン博士の手腕が発揮されている。それゆえグレンモーレンジィは、従来のウイスキーの常識を覆し、新しいウイスキー造りのトレンドセッターとしても注目されているのである。



