食&酒

2025.07.06 15:15

パリの茶懐石、秋吉シェフが引き立てるクリスタル・ロゼの味わい

Champagne Louis Roederer・副社長兼醸造責任者ジャン・バティスト・レカイヨン氏(Jean-Baptiste Lécaillon、(右)茶懐石秋吉・亭主の秋吉雄一朗氏

ワインと煮物椀、味わいの相乗効果

茶懐石秋吉は、季節の食材を使って伝統的な茶懐石のおまかせコースを提供する。10名のゲストがカウンターを囲み、亭主が調理する様子を眺めながら食事を楽しむ。食事の終わりには、秋吉氏が22年稽古を続けているお茶を披露し、ゲストは最後のおもてなしを堪能する。このハイライトとも言えるお点前は、静かで少し緊張した空気が流れ、ゲスト皆が一体となり、その瞬間と空間を共有し、一期一会を楽しむ。

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「茶事は、日本の美や技術を集約した総合芸術で、その食事に関わるのが茶懐石です。料理から季節を感じることができ、茶道の哲学や想いをも伝えることができる。わたしも、茶道を通じて、美意識や所作、器や道具を選ぶ審美眼を養いました。こうした日本文化の素晴らしさを海外で伝え、日本の価値向上に貢献したいと考えています」

生魚など和食にかかせない食材は多々あるが、ヨーロッパで手に入るものには限りがある。そのため秋吉氏は、「フランスには彩り豊かな野菜が豊富にあるので、野菜を多用するようになりました」と言う。

「暖かいもの、冷たいもの、常温のものを織り交ぜて、飽きさせないようにする」のが懐石料理であり、「お酒が入って緊張感が薄れてしまう前、中盤にクライマックスがある」と秋吉氏。クリスタル・ロゼの最新ヴィンテージ2015年は、そのクライマックスの一つである煮物椀と、まず合わせられた。

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鰹節と昆布ベースの出汁に海老のしんじょう、焼きナスとキャベツが添えられている。「最初は出汁をそのまま味わい、徐々に具がだしに溶け込み、複雑な味わいに変化していく過程も楽しむ料理です」

クリスタル・ロゼ2015について聞くと、「とても繊細なワインという第一印象。泡も優しく柔らかく、同じく繊細な風味と旨味を持つ、出汁の料理に合わせやすいと思いました。ワイン自体が、とても調和していて、各要素のいずれかが突出しているわけではなく、非常にバランスが取れています」とコメント。

たしかに、丁寧にとられた透き通った出汁に対し、ワインの酸味がアクセントを与え、二者の間で調和が生まれる。しんじょうの柔らかさとワインの優しいテクスチャも相いれる。徐々に具材が出汁に溶け込んできて、旨味がよりはっきりと強調されるようになると、クリスタル・ロゼが本来持っている濃縮した旨味もより引き出され、その相乗効果により、当初のピュアな味わいだけではなく濃厚で重層的な味わいが姿を見せる。

「和食がシャンパーニュに合うように生まれたのか、シャンパーニュが和食にあうようにつくられたのかはわかりませんが、これまで両者はとても相性が良いと感じていました」と言うのはレカイヨン氏。

「それは、両者が持つ、長い歴史や伝統から来ているのか、または両者とも素材を大事にして造られているからかもしれません。煮物椀とワイン双方が持つピュアさやフレーバーがかけ合わさられることにより、これらが強調され増幅されます。しみじみと美味しさが感じられ、ほっとする癒しや落ち着きがある調和のペアリングだと感じました」

次ページ > クリスタル・ロゼと対比するペアリングの料理とは

文=島 悠里、写真=島 悠里、茶懐石秋吉およびChampagne Louis Roederer提供

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