政治

2025.07.02 10:00

軍拡競争で急成長する防衛産業、「価値ある産業」から「力強い成長産業」へ

イタリア空軍のF35A戦闘機。2024年11月21日撮影(Joan Valls/Urbanandsport /NurPhoto via Getty Images)

イタリア空軍のF35A戦闘機。2024年11月21日撮影(Joan Valls/Urbanandsport /NurPhoto via Getty Images)

ある程度の年齢の読者であれば、米国のロナルド・レーガン元大統領が同国史上最も野心的とも言える軍備増強に乗り出したことを覚えているだろう。レーガン元大統領はソビエト連邦を圧倒するために、自国の軍事予算を1980年の1500億ドル(約21兆5000億円)未満から85年までに3000億ドル(約43兆円)以上に倍増させた。政府はB1爆撃機やMXミサイル、海軍艦隊の拡張に多額の資金を投じた。SF映画の題名を取って「スターウォーズ計画」とも呼ばれたこの戦略防衛構想(SDI)は、宇宙配備型ミサイル防衛システムの構築を目指していた。

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レーガン元大統領は、平和は強さによってのみ実現できると信じていたが、同大統領の考えが正しかったことは歴史によって証明された。米国はソ連より多くの資金を投入し、革新的な技術を発展させ、最終的にソ連より長く存続し続けているからだ。

NATO加盟国が国防費の増額で合意

今日、私たちはレーガン元大統領の戦略が国際舞台で展開されるのを目撃している。オランダのハーグで先週開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、加盟国は2035年までに国内総生産(GDP)に占める国防費の割合を5%に引き上げ、その3.5%以上を「中核的な防衛」に割り当てることで合意した。これは2014年に設定されたGDP比2%目標の2倍以上になる。

NATOのマルク・ルッテ事務総長は「トランプ大統領なしではこれは実現しなかっただろう」と述べ、加盟国に拠出額の引き上げを迫った米国のドナルド・トランプ大統領を称賛した。同大統領は「この追加資金を本格的な軍備に充てることが極めて重要だ。そしてその装備は米国製になることが望ましい。なぜならわが国は世界最高の装備を持っているからだ」と表明。レーガン元大統領の「力による平和」をほうふつとさせた。

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世界中で増加する紛争

なぜ今こうした軍事費の急増が起きているのかを理解するのは難しくない。世界が緊迫しているからだ。豪シンクタンク経済平和研究所が発表した2025年世界平和度指数(GPI)によると、現在、世界では59件の国家間の紛争が進行中で、第二次世界大戦以降最多となっている。

今年最も平和でない国として格付けされたロシアは、ウクライナ侵攻が3年経過した現在も解決の兆しがほとんど見られず、依然として軍事的脅威であり続けている。NATOによると、中国は先進的なミサイルシステムや南シナ海での海軍力増強など「大規模な」軍拡を進めている。また、イランは最近、米国の空爆に対し、カタールで米軍が駐留するアルウデイド空軍基地へのミサイル攻撃で報復し、中東の緊張が高まっている。

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翻訳・編集=安藤清香

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