政治

2025.07.02 10:00

軍拡競争で急成長する防衛産業、「価値ある産業」から「力強い成長産業」へ

イタリア空軍のF35A戦闘機。2024年11月21日撮影(Joan Valls/Urbanandsport /NurPhoto via Getty Images)

国防に注力する欧米諸国

NATO加盟国の一部は2035年を待たずに行動を起こそうとしている。ポーランドはすでにGDPの4%以上を国防費に充てている。これは加盟国の中で最も大きな割合だ。ドイツは2029年までに国防費をGDP比3.5%に増やすと表明しており、それを可能にするために憲法上の債務規則まで変更した。英国は核兵器搭載可能なF35A戦闘機12機を発注した。これは東西冷戦以降最大規模の核抑止力強化措置となる。

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米国では、トランプ大統領が2026年の国防予算として893億ドル(約12兆8000億円)を提案。軍艦や戦闘機といった従来の投資を削減する一方、ドローン(無人機)やスマートミサイルに重点を置く方針を示している。同大統領は、ウクライナが最近戦場でドローンを使用して成果を上げたことに着目し、費用対効果の高い最新装備を優先しようとしているようだ。

防衛産業が「価値ある産業」から「力強い成長産業」へ

防衛産業は長年にわたり「価値ある産業」、つまり政府契約に支えられた、ゆったりした安定性のある業界だと見なされてきた。だが、そのイメージは今後変化していくかもしれない。

米投資銀行スタイフェル・ファイナンシャルのアナリストは、防衛産業が「力強い成長産業」になりつつあると分析している。私たちは今、戦車や戦闘機だけでなく、人工知能(AI)やインターネット、宇宙や次世代ミサイルも駆使した軍拡競争の真っただ中にいる。

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米国の国防予算が記録的な高水準にとどまっていることを考えてみよう。欧州の防衛費も2024年、前年比17%増の6930億ドル(約99兆4000億円)に達した。他方で、独キール世界経済研究所によると、欧州は依然として米国の軍事装備と生産能力に過度に依存している。それもまた、機会をもたらす可能性がある。米国の防衛企業、特にドローンやミサイルシステム、サイバーセキュリティー、宇宙技術に注力している企業は、今後数十年に及ぶであろう再軍備の時代から最も恩恵を受けるものとみられる。

投資家にとって、これは長期的な変化の始まりを意味するものと筆者は考えている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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