宇宙

2025.07.02 11:00

ISS、新たな空気漏れの場所特定できず 「壊滅的な故障」の懸念と2027年廃棄の可能性

(C)NASA/Yoshio Suzuki

非与圧部である集合体室(AO)には燃料タンクなどが内装されるが、その内部を貫通するトンネルが移送室「PrK」だ。ズヴェズダの最後端にはドッキングポートがあり、ここに無人補給機「プログレス」が接続した際には、クルーはPrKを通り抜けて機体にアクセスする。PrKとはロシア語の「Prichalnaya Kamera」の略称であり、「Prichalnaya」はドッキング、「Kamera」は部屋を意味する。

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ハッチを閉じても止まらない

2019年に最初の空気漏洩が確認されて以来、ロスコスモスの技術陣は亀裂を探し続けている。それは搭載機器の裏側に隠れている可能性があるとともに、赤外線検査機や顕微鏡でなければ確認できないほど微細なものと予想される。当初は機体の接合部を重点的に探ったが、その厳密な場所は現在に至るまで特定されていない。そのため2019年以降、Prkに通じるハッチは通常は閉鎖され、ドッキング中のプログレスにアクセスする際には万一の事態に備え、ロシア区画とアメリカ区画の間のハッチが閉じられている。

NASAは6月12日、民間ミッション「AX-4」の打ち上げを延期することを発表するとともに、その理由として、新たな場所から空気漏洩が発生した可能性があることを明らかにした。NASAが「a new pressure signature(新たな圧力のサイン)」と表現するその兆候は、以下のように要約される。

「最近クルーが行ったシーリング処置によって、従来から確認されていた亀裂が塞がれた可能性があり、トンネル(Prk)内の気圧は安定している。ただし、現在Prk内の気圧が安定しているのは、その亀裂が塞がれたためではなく、相変わらず空気が漏れ続けているPrkに、他のモジュール(ISS本体)から空気が流入している可能性がある」

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同リリースからは、どのハッチから空気が漏れているのかはわからない。しかし、最悪のケースを考えれば、従来からの亀裂から空気は漏れ続けており、その発生セクションであるPrkのハッチを閉じても、そのシール(漏洩防止)部分から空気が逃げるため、そのセクションの空気流出は止めようがない、ということになる。

ズヴェズダ内部を後方に向けて撮影。Prkにつながるハッチが閉じられた状態。2021年9月4日)撮影(C)NASA
ズヴェズダ内部を後方に向けて撮影。Prkにつながるハッチ(日の丸の下方)が閉じられた状態。2021年9月4日)撮影(C)NASA
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編集=安井克至

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