ここ20年ほどの間で映画を用いたクロスプロモーションや商品タイアップは広く普及し、『バービー』や『ウィキッド』のような作品にとって不可欠なものとなった。映画『F1/エフワン』においては、時計ブランドのIWCシャフハウゼン(同社は映画『トップガン マーヴェリック』においてもリーナーとブラッカイマーらと組んでいた)が架空のF1チーム「APXGP」に着想を得た3つのクロノグラフを発表し、そのうちの1本は2万7900ドル(約407万円)で売られている。
また、トミー・ヒルフィガーも「APXGP」のスタジャンを含むストリートウェアの新ラインを展開し、メルセデスも、基本価格が19万1550ドル(約2770万円)のGT 63をベースにした限定版を、APXGPのブランドを冠して販売している。さらに、この映画に登場しないKFCまでもが、APXGPのマシンがドライブスルーに立ち寄るCMを流している。
想定した以上の広告効果
一方、エクスペンシファイのCEOバレットは、この映画への広告出稿の効果が、映画の公開前からすでに出始めていたと語る。同社のロゴが入ったAPXGPのF1マシンはすでにエド・シーランやテイト・マクレー、ドン・トリヴァー、ドージャ・キャットといったアーティストのミュージックビデオに登場しているが、これは同社が追加費用をかけずに得た露出だった。
さらに、7月に映画の予告編が公開された翌日のCNBCの番組は、エクスペンシファイを含むこの映画に広告出稿を行った企業の株価見通しを詳しく説明した。その影響で同社株式の1日あたりの取引件数は、平常時の約54万件を大きく上回る1770万件にも達した。
また、5月上旬のメットガラのイベントでは、映画でピットの仲間の新人レーサーを演じたダムソン・イドリスが、エクスペンシファイのロゴ入りの車で会場に到着してレッドカーペットに現れたが、その際に着ていた耐火スーツにも同社のロゴが入っていた。
その結果、この日の夜のエクスペンシファイのウェブサイトのアクセス数と製品の登録数は、通常の月曜の夜と比べて400%増加したとバレットは話す。
加えてバレットは、映画『F1/エフワン』を気に入った観客が、何年にもわたって繰り返しこの映画を観る可能性を強調する。つまり、ピットが演じる主人公が画面に現れるたびに、その胸にあるエクスペンシファイのロゴが目に飛び込んでくることになり、同社はそのたびに恩恵を受ける可能性がある。
「この広告は永遠に残るものだ」とバレットは語る。「私は今、自分が想定していた以上に巨大なプロジェクトに関わっていることを自覚している。あとはしっかりつかまって、その流れに乗るだけだ」


