映画

2025.07.07 16:00

ブラッド・ピットを映画『F1/エフワン』で58億円の人間広告塔にした男

Brad Pitt as Sonny Hayes in Apple Original Films’ “F1 The Movie,” now in theaters and IMAX.(C) Apple TV+ Press

リーナーによれば、プロダクトプレースメントのビジネスが本格的に拡大したのは2000年代のことで、その当時にブロックバスター映画(興行的に大きな成功を収めた作品)が世界的な商業的ポテンシャルを持つことが認識され始めたという。彼は『ナショナル・トレジャー』や『ハービー/機械じかけのキューピッド』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』、そして最終的には『トランスフォーマー』シリーズなどの仕事に携わった。リーナーによれば、このシリーズがブランドとの連携による数百万ドル規模の収益可能性を切り開いたという。

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また、記憶に残る例としてリーナーは『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』で中国の乳製品会社に提案を行ったことを挙げている。この映画で彼は、プラスチック製のストローを俳優のケン・チョンとのコミカルなやりとりの中で使用した。

一方、自分が集めたプロダクトプレースメントの広告費が、制作予算ではなくスタジオ側の収益に計上されていることに気づいたリーナーは、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーと監督のマイケル・ベイがこの資金を制作に充てられるよう交渉を行った。この契約条項は、今ではすべての有名監督の間に広がっており、こうした仕組みの導入の動機付けをさらに強めることにつながっているとリーナーは言う。

例えば、大作映画の場合は1日の撮影コストが20万(約2890万円)〜40万ドル(約5790万円)にのぼることもある。そんな中、リーナーがたった3秒のプロダクトプレースメントを1件売るだけで、アクションシーンを完璧に撮影するための追加の1日分のロケ費用をまかなえる可能性がある。

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映画の制作費が天文学的な水準に達している昨今、こうした取り組みは特に重要性を増している。夏のブロックバスター映画は、制作費だけで2億5000万ドル(約362億円)以上、プロモーション費がさらに1億ドル(約145億円)以上かかるのが当たり前となっており、黒字化は非常に困難な状況だ。

単なるコンテンツを超える「文化的イベント」

そして、映画業界でのキャリアがまだ長くはないアップルにとって、今回の作品の成否は極めて重大だ。「映画『F1/エフワン』の収益性のハードルは、ほとんど成層圏レベルだ」と、調査会社Greenlight Analyticsディレクターのブランドン・カッツは語る。「この作品がコケれば、アップルが劇場映画への本格参入をこれで最後にして、完全に撤退する可能性もある。業界の誰もが、この映画に利害を持っている」と彼は続けた。

しかし、もちろんアップルにとって映画『F1/エフワン』の価値は興行収入のみではない。この映画は、大ヒット作となればApple TV+やApple Oneのバンドルへの加入者を増やすことが期待できる。さらに、2025年のシーズン終了時に予定されているF1のメディア権利の入札に、アップルが参加する可能性にもつながるはずだ。

さらにスポンサー側も同様に、長期的な視点からの投資を行っている。映画『バービー』や『ウィキッド』といった近年の大ヒット作が明らかにしたのは、映画が単なるコンテンツを超えた文化的イベントとなって映画ファン以外にも波及し、チケット販売を超えた幅広い経済活動につながることだ。

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編集=上田裕資

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