映画

2025.07.07 16:00

ブラッド・ピットを映画『F1/エフワン』で58億円の人間広告塔にした男

Brad Pitt as Sonny Hayes in Apple Original Films’ “F1 The Movie,” now in theaters and IMAX.(C) Apple TV+ Press

そしてその中間には、さまざまな利害関係者が入り乱れる地雷原がある。映画『F1/エフワン』の場合、リーナーは現実のF1の公式スポンサーなどと競合するブランド、もしくはアップルと競合関係にある企業を起用することができなかったため、収益性の高い家電カテゴリーを除外した。

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Racing scene from Apple Original Films’ “F1 The Movie,” now in theaters and IMAX.(C) Apple TV+ Press
Racing scene from Apple Original Films’ “F1 The Movie,” now in theaters and IMAX.(C) Apple TV+ Press

彼は広告エージェンシーと協力して、エクスペンシファイのように関係者全員が納得でき、かつ関心を持ってくれそうなブランドを選定した。そうしたエージェンシーのひとつであるHollywood BrandedのCEOで、リーナーと同様のプロダクトプレースメントのベテラン、ステイシー・ジョーンズによれば、これらのブランドを揃えるまでには、丸3年にも及ぶハードワークが必要だったという。

「これは本当に大変な仕事で、ハリウッドで作られたブランドパートナーシップ映画としては史上最も困難な案件だった」とジョーンズは語る。「プロダクトプレースメントというビジネスの常識を完全に覆した。ここまでの規模になったことは、これまで一度もなかった」

映画『E.T.』が元祖となったプロダクトプレースメント

そして幸いにも、リーナーは映画のプロデューサーたちから信頼を得ていた。その信頼関係は、彼が1998年の映画『アルマゲドン』でプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーや、監督を務めたマイケル・ベイと初めて組んだことにさかのぼる。その当時はプロダクトプレースメントという用語よりも、「プロダクション・リソース」という呼び名が一般的で、予算を抑えるためにブランドから無料で物品を調達する役割が主であり、金銭のやりとりはほとんどなかった。

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対価を伴うスポンサーシップは、当時はまだ比較的新しい概念であり、規模も小さかった。1982年の映画『E.T.』では、スティーヴン・スピルバーグ監督が脚本にM&Mのチョコレートを登場させるよう書いていたが、このチョコレートの販売元のマース社は、商品を映画に出したいという提案を断った。そこでプロデューサーたちは、M&Mと見た目がそっくりなチョコレートを発売したばかりのハーシーズ社に声をかけ、100万ドルのタイアップ契約を取り付けたのだった。映画の公開後の数週間で、同社の「リーセスピーセス」と呼ばれるチョコレートの売上は、3倍に跳ね上がったと報じられている。

別の有名な例としては、1980年代のレイバンの取り組みが挙げられる。同社は、年間5万ドル(約723万円)を投じて複数のテレビや映画のキャラクターに自社のメガネを着用させたことで売上を急増させたが、その一つには1983年のトム・クルーズ主演の映画『卒業白書』が含まれていた。レーシング映画はその頃から広告業界の注目の的で、1990年のストック・カーレースを題材とした映画『デイズ・オブ・サンダー』では、エクソンがスポンサー費用として30万ドル(約4340万円)を支払ったとされている。

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編集=上田裕資

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